16. GND-Via その配置間隔にルールは無い

多層の回路基板のA/W設計において、信号ライン、電源ラインの両サイドにガードパターンまたはGND電極の塗り込みと称してGNDパターンを配置し、回路板内部のベタ電極との導通をとるためにGND-Viaを配置します。このGND-Viaの配置間隔についてA/W設計の関係者から“できるだけ短い間隔で”とか、“同一のVia間隔を繰り返さないように”とか、“ノイズ周波数の波長の??分の一波長の間隔で”とか、・・・“まー、根拠があるのか”と思われるアドバイスがあったりします。
私の現役時代にGND-ViaのVia間隔に関して電磁界Simで検討したことがありましたので、少し解説します。先ず、そのモデルの例として、多層基板で形成される信号ラインでその両サイドに配置するGNDパターンを有し、その下側の配線層にGNDベタパターンを設定して、所謂高周波回路で言うところのグランド-コプレナー伝送路(グランド付CPW)として、信号ラインの両サイドに設定するGND-Viaを列配置しています(図1参照)が、それぞれのGND-Viaに流れる高周波電流についてSim検討してみました。


その結果、信号源側及び負荷側に最も近い両サイドのGND-Viaにのみ高周波電流が流れ、その他のGND-Viaには殆ど高周波電流が流れない(-60dBより低いレベル)という結果でした。即ち、信号源側及び負荷側に最も近い両サイドのGND-Viaによって、信号ラインの両サイドのGND電極と基板内部のGNDベタパターンとが同電位になり、それ以外のGND-Viaの箇所での前記GND電極間では電位差が生じず、その箇所でのGND-Viaでは高周波電流は流れなくなるのです。
この傾向はGND-Viaを減らしても(信号源側及び負荷側の中間の両サイドに各1個)、また増やして(Via間隔を密に)も変わらず、基本的には信号源側及び負荷側に最も近い両サイドのGND-Via以外は無くてもよいという傾向でした。また、この時のモデルからの不要輻射に変化が起きるか(そもそも不要輻射自体が小さい)も検討しましたが、その輻射傾向に変化はないようでした。
上記のGND-Viaの間隔を密にすることを指摘するA/W設計の関係者がその理由として、GND-Viaの間の距離によりラインを通過する信号による定在波の発生の要因になることを挙げたりしますが、定在波は信号ラインとGND電極の電極対を通過する信号の電圧・電流に対して生じるのであって、GND-Viaは信号ラインの両サイドのGND電極と基板内部のGNDベタ電極を単に同電位で接続しているだけなので、そのGND-Viaがどのように定在波の生成に寄与するのか、説明しづらいことではないかと思われます。
従って、信号ラインのA/W設計として、信号源側及び負荷側に最も近い両サイドのGND-Via以外はあまり気にしなくてもよい、というのが当方からA/W設計者へのアドバイスです。但し、図2に示すように信号の授受を行うIC間の信号ラインに関しては、信号の送信側・受信側双方において、各ICの送受信端子の直近の両サイドにGND-Viaを形成(送受信のIC端子の隣の端子がGNDであれば、GND端子ランドパターンにかかった形状でGND-Viaを形成)することを当社のWDのA/W設計指摘ポイントとして推奨しております。


しかしながら、それでもGND-Viaはできるだけ数多く配置した方がよいと考えられる方々は、上記のWD指摘のポイントを実施して頂ければ、GND-Viaをより密に設定されても特に弊害はないと思われます。例えば、もし信号ラインがカクカクと曲げなければならない箇所がある場合等はEMC性能を上げる効果があるのかもしれません。勿論、カクカク曲げた配線は勧められませんが、、、。
A/W設計の注意事項として“GND-Viaはできるだけ数多く”というものは所謂イメージです。そんなことよりもEMC設計実践のためにもっと注意を払わなければならないA/W設計事項があります。当社の“WD”ではEMC設計上必要とするA/W設計事項とそれを基板設計に反映させるための方法をご紹介しています。
是非、当社のPDSDを含めて、WDをご検討ください。

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