28. EMCフェライトコア、機器・装置のフレームグランド(GND)に嵌める!

不要輻射(EMI)対策の現場で、何となく機器・装置等のフレームグランドがアンテナとなってノイズを放出しているのではないか、等と考えてしまうことはないでしょうか?そんな時、フレームグランドにフェライトコアを嵌められないだろうか、なんて思ってしまうことはないでしょうか?対策活動が苦しくなってくるといろいろ妄想してしまうものです。

当ホームページの“24. フレームグラウンドにノイズ電流ッ!、、、普通に流れます。”でも記しておりますが、フレームグラウンドにノイズ電流が流れ、それがノイズの不要輻射(EMI)の要因になることは明らかであり、その状況は電磁界Simでも確認することができます。

EMI対策を検討している機器・装置の内部のエレキ構成にもよりますが、もしメイン基板とサブ基板があり、それらをハーネス(ケーブル)で接続する構成がある場合、大概そのハーネスにフェライトコアを装着してEMI対策の効果を得ていることでしょう。そこで更なる効果を期待して上記したような“フレームグランドへのフェライトコアの装着を妄想してしまうのかもしれません。

このフェライトコアに関しては当ホームページ“EMCノイズ対策部品のフェライトコア。EMI対策の定石?”の中でも触れていますが、そのEMI低減のメカニズムについて、電磁界シミュレータ(CST Studio Suite LE)を使って検証してみました。

          図-1

図-1はSim検証するためのモデルであり、信号ラインとGNDラインの対でハーネスを想定したモデルとし、そのハーネスモデルの下方にベタのGNDパターンを配置してこれでフレームを想定したモデルとして、同一フレーム内でメイン基板からサブ基板に信号を伝送している構成をSimモデルとしてみました。

ハーネスのGNDラインは下方のベタのGNDパターンと接続しており、信号ラインとGNDライン対の一方の端に信号源、他方は開放の状態にして、信号ラインとGNDラインの対の信号源側の近傍にフェライトコアを装着(コアの中央の隙間にハーネスを通す)した状態にしています。

          図-2

          図-3

図-2は信号入力後0.9ns後のSim結果であり、図-3は上記のフェライトコアをハーネスに装着しなかった時の信号入力後0.9ns後のSim結果です。図-2、図-3を比較して観ると、フェライトコアの有り/無しにより、ライン対(ハーネス)の下方のベタGND、即ちフレームでの電流値及びその分布はフェライトコアが有る時の方が小さくなっていることが分かります。

このメカニズムは当社のホームページ“24. フレームグラウンドにノイズ電流ッ!、、、普通に流れます。”でも説明していますが、図-4に示すように、信号ライン対又は電源ライン対の活線側及び、フレームGND(図-2、3ではベタGND)を流れる電流Igに対してフェライトコアがインダクタとしてチョーク(電流を抑制)しているためなのです。

            図-4

従って、電流Igをチョークする作用として“フェライトコアをハーネスに装着した”というのは、“フェライトコアをフレームグランに履かせた”と同等ということになります。何れによっても電流Igはチョークされ、機器・装置のフレームがアンテナ(放射体)となって放出されるノイズは低減されます。

しかしながら、不要輻射対策の現場で、既にハーネスにフェライトコアを装着しているのに、ノイズレベルが規定値まで下がらず、フェライトコアをハーネスに数珠の様に複数装着させている状況もあったりします。ご存じのようにフェライトコアの装着は1個目で顕著なノイズ抑制効果を発揮しますが、更にコアを追加しても期待したノイズ低減効果は得られないものです。これは基本的に信号ラインや電源ラインにおけるノイズレベル(絶対値)が高いためなのです。

そのような時は、当社が提案しております、PD、SD適用でノイズ対策を施し、更にノイズ抑制効果を追加したい場合にフェライトコアの装着を加えることをお勧めします。尚、PD、SD適用は回路図設計段階から実施できるEMC設計です。

関連ページ

         24. フレームグラウンドにノイズ電流ッ!、、、普通に流れます。

         25. これがグラウンド(GND)を流れるリターン電流!

         EMCノイズ対策部品のフェライトコア。EMI対策の定石?

         EMC設計 MBDでDX! 技術&学術

         信号ラインのEMC設計は”SD適用”で決まり!

         電源ライン設計を革新。PD適用

27. ESD試験時の2次放電発生の予見をsimで確認・・・これが不具合原因!

当ホームページのコンサルブログの記事、“サージ関連試験での不具合対策は試験パルス印加による2次放電発生も勘案して”や“ESD試験(IEC61000-4-2)対策に関する技術資料”のテキストPart-Iの中で2次的放電に関する下記図-1等で解説しておりますが、ESDガンの印加による機器内での2次放電発生の可能性について電磁界Sim(CST Studio Suite LE)を使って検討してみました。

           図-1

そのSimモデルは図-2に示すように厚み1mm、幅50mmの金属板を周回させてフレーム(300✕200✕50mm)とし、その周回の起点と終点となる部位に0.1mmのギャップ(空隙)を作っておきます。これは一般的な電子機器の金属フレームを想定し、その金属フレームの一部に電気的な接触が不十分な状態(接触する金属板間での溶接不良とか金属表面上の防錆メッキの酸化による不導通化等)が生じた状況を想定しています。

           図-2

この金属フレームに図-2に示す箇所に機器をアースするGND配線を設定し、ESDガンよりESDパルス(基本的にはIEC61000-4-2 で規定された電流パルス)を注入します。ESDガンの設定電圧は4kV(ESD耐性を観るための高めな設定)としています。

図-3はESDガンからのESDパルス注入後1.1ns(所謂ESDパルスの第1ピークの時間帯)におけるフレーム表面上のESD電流の流れる状況を示しています。ESD電流の流れ方の特徴としては、ESDガンの電圧印加時の放電チップの極性によりますが、放電チップ側からフレームのGND端子側に向けて(或いはその逆に)電流は流れていきます。その際、電流は金属フレームのエッジ(縁部)に集中して流れていく傾向があります。これは電流とそれによる磁界成分との関係で、フレームのエッジ周辺の空間で磁界成分が急激な方向転換(⇄のような)を生じるため磁界密度が上昇し、それを補う電流密度の上昇が生じるため、と考えられます。勿論その状況はこのSimでも確認できます。

           図-3

このESDパルスが印加された際の上記の0.1mmのギャップに生じる電圧について、図-4に示します。このSimの結果によると、ギャップ間にはESDパルスの印加後50nsの間に7回にわたり300Vを超す電位差が生じていることが分かります。ここで、0.1mmのギャップに300V以上の電位差がかかった時、何が起こるかが問題なのです。

           図-4

ここでちょっと火花放電(所謂スパーク)に関する性質について説明します。この火花放電に関しては、パッシェンの法則というものがあり詳細な説明はここでは省きますが、火花放電を生じる際の、空間で対向する電極間の距離(d)とその電極間の電位差(Vs)による電位勾配Vs/dは、空気中では一定になる傾向を示します。良く知られた例として、空気中での1cmの電極間では約30kVで火花放電を生じます。

これを今回のSimに当てはめると、0.1mmのギャップでは電位差300Vを越えると火花放電が発生することになります。今回使用した電磁界シミュレータでは、空間の電磁界を解くためのソルバーであるため、火花放電現象(空間のプラズマ発生)を解析することはできませんが、プラズマが生じる条件が生じているかどうかを観ることはできます。尚、プラズマ(火花放電)が発生すると対向する電極間の電位差は急激に低下します。ESDパルスの場合、nsレベルで電流の放出が終わるので、火花放電で生じたプラズマは数nsしか継続せず消滅します。従って、実際のギャップ間の電位差は図-4で示したように300Vを何回も越えるということは無く、1度超えた後の火花放電発生によりかなりの低電位差まで低減し、それ以降はその低電位差レベルで減衰振動するものと思われます。何故なら火花放電の発生はギャップ間の電位差を解消(所謂リセット)する方向に作用するからです。

ではESDパルス印加時に発生する2次放電が如何に電子機器・装置に不具合を発生させるのか、については今のところ解明できていません。しかしながら、私の現役時代の経験として、ESD試験対策の現場でこの2次放電発生の回避を意図した対策は機器の不具合発生を解消させることができました。

また、(株)ノイズ研究所様が提供されている微小ギャップ放電チップ(通常の放電チップよりも印加する電流振幅波形が大きくなる傾向があります)等はギャップ起因の2次放電は電子機器・装置へのダメージを高めてしまう性質があるのかもしれません。更に、ESD対策としてよく行われるGND強化と称するフレーム等への板金追加やアルミテープ貼り等は、結果的に前述の2次放電発生を回避させているのかもしれません。

2次放電発生とその影響については当ホームページの“ESDシミュレーションに新たなソルバー登場!”でも紹介しておりますが、プラズマ発生に対応したシミュレータにより解析できるものと思われます。尚、今回紹介した電磁界シミュレータによるESD試験のSimの設定方法等については、当社のセミナー“IEC61000-4-2試験対策 Part-II”の中で紹介しております。ご興味のある方は是非お問い合わせください。

関連ページ

  ESD試験(IEC61000-4-2)対策に関する技術資料

  ESDシミュレーションに新たなソルバー登場!

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  ESDスキャナで観測。でもやっぱり対策はいつものGND強化?

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  ESD対策の新たなる進展はあるのか?

  4 ESD及び静電気による機器・装置の不具合解析に当社のESD2

26. EMCコモンモード電流は ・・・結局イメージか?

不要輻射(EMI)ノイズの発生メカニズムとして、EMC関係の解説書やセミナー等では図-1に示すように、ノーマル(人によってはディファレンシャル)モードとコモンモードというノイズ電流の流れ方があるから、とされています。このコモンモードに関して、如何なるものか、検討してみました。

その前に、ここでの言葉の使い方で、ディファレンシャルモード/コモンモードについてですが、それらは本来2つの信号源及びそれらの伝送路を使った信号伝送(一般的には差動伝送)において定義される成分の波動モードに対する呼称であり、EMC関連で説明されるものとは本質的に異なりますので、上記のノーマル(当たり前)モードは良いのですが、コモンモードは差動伝送のコモンモードと混同しないように”EMCコモンモード”と呼びます。

さて、本検討のEMCコモンモードですが、当方にとって下記2つの疑問があります。

①EMCコモンモードの電流を流す起電圧源はどこにあるのか?

②そもそも何故EMCコモンモードが存在するのか?

①に関して、セミナー等で講師に質問したことがありますが、“〇〇(EMC関連の本)の☓ページを読んで下さい”と自らの勉強を促されたことがありました。勉強してから来いということですね。それはさておき、 ②にも関連しますが“ノーマルモードからコモンモードへ(その逆も)の変換が起きるから”、また“その変換は伝送路間の接続箇所(基板配線とケーブルの接続とか基板内配線でも配線幅が変化する箇所等)で生じ、その箇所が起電圧源となる”とよく解説されています。人によってはループ配線や配線周囲とフレーム等との浮遊容量が起電圧源になると考えているようですが、さすがに誘導性・容量性のパッシブ素子成分が電圧源になるというのは無理があるでしょう。

さて、前述したモードの変換については差動伝送におけるモード変換(ミックスモードSパラメータで説明される)に合わせたような説明で、Hot(信号/電源)ラインとGNDラインの一般的な伝送路に、フレームGND・システムGNDなる概念極を加えた疑似差動線路を構築することにより前述のモード変換を起こす構造があると考えられているようです。

しかし、そもそも差動とは異なる単一信号源とその伝送路(シングルエンド)において差動におけるモード変換を当てはめるのは無理があります。また、モード変化を起こす箇所に関して言えば、その箇所は伝送路のインピーダンスが変化する(インピーダンス整合が崩れる)点であり、その点で生じるのは反射波であって、その反射波もやはりノーマルモードであり、EMCコモンモードではないのです。

この状況を電磁界シミュレータ(CST Studio Suite LE)で検証してみます。

図-2はそのシミュレーションモデルで、2本の導体ライン(HotラインとGNDライン)の一方の端に信号源、他方の端(負荷側)は開放として、信号源側から負荷側に向けて電流が流れるようにすると共に、GNDライン及びHotラインの下部にGND板(ベタパターン)を置き、このGND板は信号源側においてGNDラインと接続(短絡)させて、図-1に示したEMCコモンモードの回路モデルに相当する構成にしてSimしてみました。

図-3はその結果であり、HotラインとGNDライン、GND板周囲に表示された➡は電流の分布状況を示しています。尚、その➡の大きさや色は電流密度の大きさを示し、➡の向きは電流の流れの方向を示しています。図中、左側の信号源からの電流の流れだしに対して0.4ns後の電流分布の状況を示しています。

特徴的なこととして、先ず電源側からHotラインとGNDラインの負荷側に向けて電流分布が移動していくことと、GNDラインにおいてはHotラインとは逆方向を向いた電流が移動していることです。(図をズームして観て下さい。)この理由については“25. これがグラウンド(GND)を流れるリターン電流!”を参照して下さい。

次に、HotラインとGNDラインに同方向に流れる電流を見出すことができないということです。即ち図-1に示したEMCコモンモード電流Icに相当するものは観測できないということです。

そして、GNDラインとGND板には同方向(同じ向きの➡)の電流が流れるということです。これは図-1で解説されているEMCコモンモード電流Icの流れの向きとは全く異なる点です。これはGNDラインとGND板とが同電位の関係となるため、当然の結果と言えます。図-3ではHotライン下部のGND板上には電流が分布しますが、GNDライン下部のGND板上には電流が分布しません。これはGNDラインとGND板間が同電位で電界が生じていないためなのです。

電磁界Simの計算結果としては

|Hotラインを流れる電流|=|GNDライン+GND板を流れる電流|

という関係になっており、” 24. フレームグラウンドにノイズ電流ッ!、、、普通に流れます。”の中でも示しましたが、図-4に相当する関係になっているのです。これは電流においてdivJ = 0なる関係があるためです。この詳細については” EMC設計 MBDでDX! 技術&学術”のセミナーの中で説明致します。

EMC関連の記事の著者やセミナー講師の方々は、EMCコモンモードは測定することはできないと述べられていますが、シミュレーションによってもEMCコモンモードを評価できないということからEMCコモンモードは存在しないと考えるべきかと思います。勿論、SPICE等の回路シミュレータでも扱うことはできません。

以上のことから、EMCコモンモードはEMCの現象を回路学的な扱いの中からそのように見え、上手く説明が付くものとして作られたイメージではないかと思われます。

それでも”電源回路にはコモンモードフィルタがあるぞ”、と言われる方がおられると思います。これについても結局上記と同様な説明ができるのですが、それについてはまた場を改めて解説致します。

関連ページ

   9.ノイズ電流の流れ方。その前に前提のモデルを考えて。

   6.コモンモード電流・リターン電流とEMIの関係、如何なるモデルか?

   24.フレームグラウンドにノイズ電流ッ!、、、普通に流れます。

   25.これがグラウンド(GND)を流れるリターン電流!

   EMC設計 MBDでDX! 技術&学術

25. これがグラウンド(GND)を流れるリターン電流!

電源(又は信号源)から目的のIC等の端子に繋がる電源ライン(又は信号ライン)で流れる電流についてはEMC関連の書籍等で、“電源ライン(又は信号ライン)に沿って電流が流れていき、GNDパターン(ライン又はベタ)を通って電源(又は信号源)に戻る”、と説明されています。特に上記GNDパターンを流れる電流をリターン電流と言い、そのリターン電流が流れるパターンをリターンパスとし、このリターンパスの確保(短い・幅広といった低インピーダンス化)がEMC対策上重要なパターン設計である、と解説しています。

しかしながら、そう言ったリターン云々はどの程度重要なのか、そもそもリターン電流とは何なのか、を考えたことはあるでしょうか?

そこで、最近、電磁界シミュレータで有名なCST Studio Suite LEを個人の学習用途でダッソー・システムズ社様のWebサイトよりダウンロードし当方のPCにセットアップして、3D電磁界Simができる環境を構築しましたので、そのリターン電流なるものをこのシミュレータを使って検討してみることにしました。

Simモデルとしては図-1に示すように2本の導体ライン(HotラインとGNDライン)の一方に信号源、他方(負荷側)は開放として、信号源側から解放端に向けて電流がどのように流れるのかをSimしてみました。

図-2はその結果であり、HotラインとGNDライン周囲に表示された➡は電流の分布状況でありその大きさ及び方向性を示しています。図中、左側の信号源からの電流の流れだしに対して0.1ns後、0.5ns後、1ns後の電流分布の状況を示しています。

特徴的なことは、時間の経過と共に電源側からHotラインとGNDラインの開放端側に向けて同時に電流分布が移動していくことと、GNDラインにおいてはHotラインとは逆方向を向いた電流が移動していることです。(図をズームして観て下さい。)

特に、GNDラインにおけるHotラインとは逆向きの電流が移動していくのは奇異に見えるかもしれませんが、電磁気学的に電流とは“単位時間中に移動する電荷量”ということになるので、このSimにおける電流の移動方向と電流の矢印が一致する場合、“正の電荷の流れ”ということになり、電流の移動方向と電流の矢印が一致しない(逆向き)の場合は、“負の電荷の流れ”ということになります。これは信号源自身の電圧で押し出される正負の電荷量が等しく、それにより信号源の両端の電位差(電圧)が保たれることを意味しています。またこれは実際の動作時の電源における電力出力端(正極)とGNDとの電位差が変化しないことに相当します。

このようなSimの結果から、HotラインとGNDラインの電流は信号源側から逆平行の状態で負荷側に向かって移動していくのであって、EMC関連の書籍等で説明されているGNDパターンでのリターン(戻りのイメージ)で流れているのではないことが分かると思います。

とは言うものの、“だから何なんだ!”という声が聞こえてきそうです。実はEMC設計、特に回路基板上のパターン設計として“Hot(電源・信号)ラインとGNDラインの電流が逆平行の状態で安定的に流れるようにラインパターンの配線方向に関して、ライン間の距離やラインの形状を維持できるようにパターニングすることが重要であることが分かります。従来から言われている最短距離で配線する、GNDパターンは幅広にする、といった事柄は最優先の事項ではないのです。詳細につきましては当社が推奨しております、回路基板のA/W設計におけるEMC設計WD(Part2)のセミナーでご紹介しております。

従来のEMC関連書籍で説明されているリターン電流は、基本的に電気回路的な考え方に基づいて説明がなされており、見た目の様子からそのようにイメージするとよいという解説になっているようです。今回使用したシミュレーションは電気回路学には無い電荷、電界、磁界といった概念(電磁気学)を基に計算しており、実際に何が起きているかを可視化できています。こういったシミュレータを使うことで例えば、GNDパターンを意図的に変化させた場合とか、Hotライン-GND間にコンデンサを入れたり、ラインにコイルを挿入した際等の電流の流れも可視化することができます。単に著者のイメージで電流の流れ方を解説している書籍もあったりしますが、Simしてみると思い込みのイメージと異なっていることが分かります。詳細につきましては、当社のセミナー“EMC設計 MBDでDX! 技術&学術”の セミナーでご紹介しております。

関連ページ

  9.ノイズ電流の流れ方。その前に前提のモデルを考えて。

  6.コモンモード電流・リターン電流とEMIの関係、如何なるモデルか?

  26. EMCコモンモード電流は ・・・結局イメージか?

  WDに関する技術資料

  EMC設計 MBDでDX! 技術&学術

24. フレームグラウンドにノイズ電流ッ!、、、普通に流れます。

グランド、特に電子機器・装置で接地されたフレーム(シャーシ)におけるノイズ電流の流れ方に関して、多くのEMC関連書籍や業界誌等ではよく目にするモデルを使ってコモンモード電流として流れることを解説しています。当ホームページにおいても技術解説、“19. グラウンドループ➡ノイズ放射・・・過剰な妄想かも!”の中でも当方の独自の視点で説明してきましたが、もう少し深堀してみます。

先の記事(19.)の中でも扱っていますが、

EMC関係者の間では図-1にある様に信号源から負荷に向けて伝送線路(活線とGND線)にノーマルモードの電流が流れるときに、その2本の伝送路とシステム(仮想的?)GNDとの間にコモンモードの電流(ノイズ)が発生する、と一般的に解説されています。しかし、この時のノイズ源が2本の伝送路(活線とGND線)とシステムGNDの間に何故生じてしまうのかについては回路学的にも電磁気学的にも明確な説明は付けられない、というのが当方の立場です。

そこで新たな解説モデルを図-2に示したいと考えております。

先ず、システムGNDといったものですが、何処にあるのか、実際の機器・装置を扱っている上では何に該当するのか、極めて不明確です。実際のEMCの課題を考える上では機器・装置の接地されたフレームと考えるべきでしょう。そして、図-1のように信号源から負荷に向けて伝送線路に信号を流す時、信号源と負荷はそれぞれフレームGNDに繋がった状態となります。

このモデルから言えることは、下記となります。

①信号源から伝送線路に信号電流(In)が従来の解説通りノーマルモードとして流れる。

②信号源からは、伝送線路の活線側を通り、負荷の接地端よりフレームGNDを通り信号源の接地端に戻る電流(Ig)も存在する。

③電流Igはフレーム(GND)と同電位となる伝送路のGND線側には流れない。

④よって伝送線路の活線にはInIgの電流が流れる。(キルヒホッフの第1法則)

実はこの状況は電磁界Simで確認することができます。また、実際の現場においても伝送路にハーネス等が介在する場合にそのハーネスをフェライトコアに通すことにより不要輻射対策をする場合がありますが、その際に抑制されるのは図-2で示すところの電流IgInには無反応)となり、機器・装置のハーネス及びフレームに流れる電流Igが低減され、電流Igにより生じる不要輻射(EMI)を効果的に低減することができます。

図-2に示す電流Igについては機器・装置の回路部品の実装方法により低減することが可能です。即ち、不要輻射対策(EMI)の設計が可能なのです。それらの詳細につきましては、当社のセミナー及びテキスト“EMC設計 概要~MBD”の中で解説しております。

従って、コモンモード等というちょっとトリッキーなもので説明しなくても現象を説明するのは可能なのです。そもそも、コモンモードとは2つの信号線路(それぞれが信号源とGNDを持つ)がある場合で、2つの信号線路の信号伝送の取り扱いにおいて差動(ディファレンシャル)モードと共有(コモン)モードが定義されるのであって、1つの信号源と伝送路に対して当てはめるべきではないと思っております。

尚、100V等の商用電源を扱う電源回路では、1次側となる商用電源は安全規格及びそれに伴う回路処理の関係で活線2極はそれぞれフローティングとして扱い、その電源回路内で機器・装置のフレームと同電位となるGNDが作られます。このGNDは電源及び機器・装置の安全規格レベルに従ってアースレベルの外部接地を行って使用することになります。この時、1次側の活線2極(線間100V)はそれぞれに機器・装置のGNDに対して電位を持つことになるため1次側の活線2極とGNDとの間に共有(コモン)モード電流が生じます。この活線2極の共有モード電流を低減するために電源回路の1次側にはコモンモードチョーク(ラインフィルタ)を挿入することになります。

関連ページ

   19. グラウンドループ➡ノイズ放射・・・過剰な妄想かも!

   9. ノイズ電流の流れ方。その前に前提のモデルを考えて。

   6. コモンモード電流・リターン電流とEMIの関係、如何なるモデルか?

   26. EMCコモンモード電流は ・・・結局イメージか?

   EMC設計 MBDでDX! 技術&学術

23. 回路基板のデジアナ分離・・・GNDパターンは、、、

EMC設計を考慮した回路基板のA/W設計(配線パターン設計)を解説している記事はとてもたくさんありますが、その中でデジタル回路とアナログ回路との分離の方法としてGNDパターンでの分離について述べているものがあります。イメージとしてデジタルGNDとアナログGNDに分離・分割してパターニングするのがよいようにも見えますが、私の現役時代のA/W設計の経験から、“GNDパターンを分離することは厳禁”と考えております。GND分離は絶対にやってはいけないのです。

単層基板での配線設計では結果的にGNDパターンが分離した形態となってしまうので仕方がないのですが、多層基板で内部にベタのGNDパターンが形成できる場合は、絶対にそのベタのGNDパターンにスリット等を形成してアナログ回路用とデジタル回路用に分けてはいけません。

GNDのベタパターンにスリット等で分離操作等を行うと、たいていの場合その機器のEMCにおける不要輻射(EMI)が10dBレベルで悪化します。その原因として考えられるのが、GNDと常に対向すべき電源ラインや信号ラインがその配線パターン中において意図しないGND跨ぎを起こしてしまうからです。このGND跨ぎはよく回路基板の配線設計で絶対やってはいけない配線の例としてよく紹介されているもので、スリットありのパターンの上層の配線層でラインパターンが通過する関係になる形態の構成です。何故、放射ノイズが増大してしまうかについては当社の“EMC設計 MBDでDX! 技術&学術”のセミナーの中で解説しております。

特にデジアナ混載IC等ではICの電源端子でアナログ用とデジタル用の端子が必ず用意されていますが、これに合わせてGNDを分離するようなことをやってはいけないのです。そもそもIC側にデジタル用・アナログ用としてのGNDが無いのが普通です。IC側の回路の作り方からしても各MOSトランジスタのサブストレート電圧の考え方からしてデジタル用とアナログ用のGNDを作る必然性はないので、デジアナを分けたGND端子を用意しないのが一般的だと思います。(但し、個々の設計者側の考え方の違いがあるかもしれません)

では電源系におけるデジタル系・アナログ系の分離はどうするか、について、先ず、この分離とはいかなるものかを説明します。イメージとしてデジタル系の何となくモヤモヤ(カチカチ?)したノイズが共用されているGND電極や空間伝搬を介して静かであるべきアナログ系回路に侵入してくる(回り込む?)といったものでしょうか?イメージなので想像は自由ですが、実際は電源供給系からデジタル回路で生じるノイズがアナログ回路の電源供給系(直接的には電源ラインを伝送路として)を介して伝搬してしまうのです。

この状況をシミュレーションで解析する方法に関して、当社が提案している“PD適用”というやり方があります。詳細につきましては“PD適用・実践編”及びそのセミナーの中で解説しております。この方法により、デジタル系電源ラインからアナログ系電源ラインにノイズがどの程度漏洩又は抑制しているのかを数値で確認できます。更に、ノイズ漏洩抑制のためのパターニング方法及び素子(EMC対策部品)の使い方を検討することができます。一般的に言われている、電源ラインはできるだけ低インピーダンスに設計すべきと言われますが、必ずしもそうではないことに気付けます。

尚、電源ラインのパターニング方法に関しては“WD Part-II”の中でも紹介しております。

当社はユーザーの皆様にEMC設計でMBDの考え方としてPD適用をご紹介しております。是非ご検討の程よろしくお願い申し上げます。

関連文献

   EMC設計 MBDでDX! 技術&学術

   PD適用・実践編

   WD Part-II

   10. EMC設計、レガシー3D-SimからMBD (1D-CAE)へDX!

   MBD、EMC設計を革新

   DX時代のイノベーション

22. EMC対策、グラウンド(GND)に関わるイメージに御用心!

当ホームページでは、“”EMC設計はGND強化!“ って~なんの強化なの?”““GNDが揺れている”、って何ッ?“などで、EMC対策の現場の担当者が困った末に行き着く、分かったようで、よく分からないGNDに関係する考え方について解説してきました。よく分からない”とは、“では具体的にどうすればいいのか?”が思いつかない、という意味であって、現場の担当者はノイズという何かザワザワしたイメージから上記のような考え方を思い描いていたのかもしれません。

上記のGNDに関わる考え方以外にも、私が現役時代にEMC対策の現場の担当者やまたその関係者からよく耳にした考え方として下記の様なものがありました。(勿論、それ以外にも沢山ありましたが、、、)

①電源GNDパターンから信号GNDへのノイズが染み出し/流れ出している。(水の様に?)

②GND電極パターンを介してノイズが信号ライン間を伝搬する。(クロストーク的なものか?)

③電源配線パターンはノイズで汚染されている。GNDでカバーするべき。

④GNDパターンは面積が広い程インダクタンスが小さいなり理想に近づく・・・

⑤GNDパターンを広くすることにより不要輻射が低減する。(・・・GND強化的なものか?)

これらは私が思うに、実際の基板の配線パターン(図面や実物)を担当者が目視した時にその見た目からイメージしたもの、ではないかと考えています。しかしながら、EMC関係の書籍等でもそういった考え方で解説しているのではないか、とご指摘する方もいるでしょう。でも、そういった解説をされる方も実際の見た目からイメージして現象を解説しているだけなのです。なぜなら、それらの現象について実測等で実証したり、回路学的・電磁気学的なアプローチによる解釈をしているわけではないからです。

先ず①、②に関して解説しますと、当ホームページでも何回か述べてきましたが、電源や信号はそれぞれの活線とGNDによって伝送されますが、GND側が共有されていたとしても、異なる活線間は高周波回路学的に極めて高インピーダンスとなりますので、電磁波(ノイズ)が伝達しづらい関係になります。しかし、ライン間結合という現象を考える方もいるかもしれませんが、ライン間の結合度を-20dB以上にするためにはライン同士を極めて近接させて長く配置したり、共振現象を利用するような特殊な配置が必要となり、結合できる帯域も高周波側の狭帯域でしか実現できません。こういった構成は一般的な回路基板では意図せずに構成されてしまうようなパターン構成ではないのです。

③の考え方で仮に電源ラインにノイズがあったとしても、それは電源の活線とGNDの間で伝送しています。仮にその電源ラインの近傍に信号ラインがあったとしても電源側のノイズが信号ライン側に伝搬することは殆ど無いのです。

それでもクロストークが生じているように見える場合があったりします。そのようなときはむしろIC等に電源を供給する電源ラインにおけるパスコンの設定(当ホームページではPD適用)について見直すべきです。デジタル回路はCLKに同期して動作しますから、ICの電源端における電圧変動もCLKに同期して起きやすく、それによりIC内の信号出力バッファーの動作もCLKに同期して不安定となり、出力された信号を基板上の信号ラインで観測した際、その波形にCLKに同期した影響が出ているのが見えたりします。それがライン間のクロストークの様に見えるのです。

④に関しては、マイクロストリップ線路の構成を例に挙げて“理想的にはGNDは線路の断面方向で幅が無限であるのだが、実際にパターニングされるGNDの幅ではGND側がインダクタンスを持ってしまうので、GNDパターン上に電圧分布を生じてしまう、等という説明される方がいますが、それはあくまでイメージであって、その考え方の根底に”GNDは至る所常に電圧が0Vでなければならない“という誤った理解があるように思えます。そもそも電磁波(ノイズ)は波動であるので、活線側の電圧・電流分布に応じてGND側にも電圧・電流分布が生じます。その状況は電磁界Simで確認することができます。また、GNDの幅に関しても対向する活線との距離に依存しますが、ベタパターンのGNDを内層とする多層基板等では活線側の幅に対して2~3倍程度の幅のGNDを考慮すれば十分です。こちらも電磁界Simで確認できます。やはり、電磁波(ノイズ)は活線とGNDとが対になって伝送するものと考えておくべきなのです。詳細につきましては当ホームページの”6. コモンモード電流・リターン電流とEMIの関係、如何なるモデルか?“”7. GNDが関わる機器EMI対策について考えてみる。“”9. ノイズ電流の流れ方。その前に前提のモデルを考えて。“でも解説しております。

⑤の考え方は誤りではないのですが、その背景を④にも関連して解説します。回路基板を設計する際には各配線間にスペースに余裕があるのであればGNDパターンで各種配線相互間の余白部を埋めておくべきです。不要輻射対策として、GNDパターンがノイズをあたかも吸収するような説明をされる方もいますが、それは単なるイメージです。そうではなく、重要なこととして、信号ライン、電源ラインが形成する伝送ラインのインピーダンスを低くできることです。伝送ラインのインピーダンスが低いということは電波工学的には高周波帯の信号(ノイズ)に対し、伝送ラインと空間との間のインピーダンスミスマッチを大きくすることを意味します。即ち、伝送ラインから空間へのノイズ放射を抑制することができるのです。また、電磁気学的な観点として活線側から出る電界成分及び磁界成分が近傍のGND側との狭い空間でそれらの密度を高める(集中する)ようになるので、電磁波(ノイズ)放射への要因が低減するのです。

以上のようなEMC設計におけるGNDの理解を深めたい方は是非当社の“EMC設計MBDでDX! 技術&学術”をご参考にして頂けるとありがたいです。

※関連ページ

  EMC設計はGND強化! って~なんの強化なの?

  “GNDが揺れている”、って何ッ?

  EMC設計 MBDでDX! 技術&学術

  電源ライン設計を革新。PD適用

  PD適用に関する技術資料

  6. コモンモード電流・リターン電流とEMIの関係、如何なるモデルか?

  7. GNDが関わる機器EMI対策について考えてみる。

  9. ノイズ電流の流れ方。その前に前提のモデルを考えて。

21. 機器・装置間の接続ケーブル・・・シールド線(GND)は両端接続が基本!

機器間又は装置間をケーブル接続した状態でのノイズ放射リスクに関して、グランドループ(コモンモード)のモデルを使ってその回避方法についてはEMC関連の業界誌やセミナー等の中で紹介されています。しかしながら、当社の解釈の仕方としては、当ホームページの記事“19. グランドループ➡ノイズ放射・・・過剰な妄想かも!”でも紹介していますが、やはり少し違うのではないかと考えております。

先ず、グランドループ自体はGND電極同士が繋がったものなので、何もなければ至る所DC・AC的に0Vになります。従って、このループがノイズを放射(アンテナ条件が揃ったとして)する場合、ノイズ電源となるものが外部の真のノイズ源(例えば外部のモーターのようなもの)の電源配線等から誘導結合・誘電結合によってグランドループに侵入する、との説明がなされています。これによりグランドループにノイズ電源ができ、そこから出た高周波ノイズ電流がグランドループを周回してノイズ電源に戻ると説明されています。

しかしながら、上記のモデルを解釈するためにはちょっとキビシイのではと思われるところがあり、下記に列挙してみます。

①誘導結合、誘導結合を挙げていますが、例えば誘導結合に関して、その結合度がどの程度を想定しているのでしょうか?トランスをイメージして頂けると分かりますが、1次と2次のコイルの巻き方を工夫し、磁性材料をコア材にして、1次と2次のコイルの結合係数を1に近づける訳ですが、コイル状でもない配線同士(1次:真のノイズ源と接続/2次:グランドループ/双方とも線状だとするとインダクタンス性としてのQ値は極めて低い)が、磁芯となるコアもない空間で且つ距離数十センチ程度離れた状態でどの程度の結合係数が得られるでしょうか?静電結合についても同様で、前述の1次と2次の配線間の静電容量はそれらの距離が数十センチ程度離れた状態では0.1pFにもならないでしょう。高周波帯(1GHz以下程度)では極めて高抵抗(ハイインピーダンス)な状態です。1次側の配線におけるノイズのエネルギーが極めて大きければ、2次側の配線にも影響が出てくるのかもしれませんが、そのような場合は1次側の配線からの直接のノイズ放射が問題となり、むしろそのノイズ対策を優先すべきでしょう。

②ノイズ電流が上記のグランドループを水のようにスイスイ流れていくようなイメージで説明されていますが、ノイズと言っても高周波(当ホームページの記事“11. ノイズという電磁波。では電磁波とは?(1)~(3)”で解説)なので、安定したインピーダンスの伝送路でなければ高周波電流を安定して流すことはできず、不安定な変化しやすいインピーダンスで単線に近いような構造の導体に対しては、高周波電流は高い反射を受けて流れ込んでいかないでしょう。

③ループ状となる配線構造については、当ホームページで度々記してきました(“8. ノイズも電磁波。検出するのはアンテナ?プローブ?”“ 19. グランドループ➡ノイズ放射・・・過剰な妄想かも!”“ループ状配線 ➡ノイズのアンテナは考えすぎ”)が、基本的にプローブとして磁界成分を検出しやすい構造であるものの、ノイズを電磁波として遠方に放射するアンテナにはなりにくいものなのです。ループ状構造だから即アンテナと断定するのは単なるイメージ先行でしかないのです。

以上のことから、グランドループモデルによるノイズ放射の解説には無理があると考えております。しかし、機器の放射ノイズ測定をされている多くの方々は機器のACケーブルや機器間を接続するケーブルの姿勢を変えることでノイズの放射レベルが変わることを経験していると思います。

これはただそのように観えるだけなのです。

当ホームページの記事“19. グランドループ➡ノイズ放射・・・過剰な妄想かも!”でも説明していますが、機器間を接続するケーブルのGNDラインの処理の仕方に問題があるのです。即ち、ケーブルの部分(区間)のGNDラインがノイズの放射体になり、そのGNDラインと機器との接続部がノイズの励振源になるのです。従って、ケーブルの姿勢を変えることでノイズの放射レベルが変わるのは、放射体の姿勢により放射状況(振幅や放射の指向性)が変化するためなのです。

上記のこの課題の背景及びケーブルのGNDラインの処理の仕方の詳細を当方のセミナー及びテキスト”EMC設計 MBDでDX! 技術&学術の中で解説しております。

実際、私も装置(又は機器)を接続するケーブルによる不要輻射の問題をいくつか経験しましたが、全く問題ない場合もあったりしてその違いを見比べ、検討してまいりました。同様な経験をされている方々は是非当社のセミナーを聴講して頂きますと考え方の整理がつくかと思います。

※関連ページ

8. ノイズも電磁波。検出するのはアンテナ?プローブ?

19. グランドループ➡ノイズ放射・・・過剰な妄想かも!

ループ状配線 ➡ノイズのアンテナは考えすぎ

13. ノイズという電磁波。では電磁波とは?(3)

12. ノイズという電磁波。では電磁波とは?(2)

11. ノイズという電磁波。では電磁波とは?(1)

EMC設計 MBDでDX! 技術&学術

20. 回路基板の装着・・・シールドケース、ネジ止めは重要!

電子機器の設計の際、電子機器を構成するフレーム(シャーシ)に電子機器を制御する回路基板を装着する方法に関しては、どこのメーカーさんでも機器の外観や形態/機器の機能性/製造(組み立て)上の効率性等を優先的に考慮して設計されているのではないかと思います。もし、EMC設計的な考え方も考慮されているようでしたら、完璧です。

しかしながら、もしEMC設計的な考え方なく回路基板の装着設計をされているようでしたら、是非参考にして頂きたい事柄をここで述べたいと思います。

電子機器・装置は電気的な安全設計及び耐イミュニティーの関係から、そのフレーム(シャーシ)は基本的に接地側の電位に設定されます。但し、その接地電位を地上接地(アース)と接続させるかどうかは機器の安全規格等によりますが、必須ではありません。また、その接続の有無はノイズの不要輻射とは直接関係が無い場合が多いです。

先ず、重要なことは電子機器のフレームは回路基板の接地側(GND)の電位に設定されることです。当社HPの記事“13. ノイズという電磁波。では電磁波とは?(3)”でも解説していますが、実際の回路においては電源・信号等の電力を活線側(Hot側)の電極とGND側電極とで対をなしてそれぞれの電極に生じる電圧・電流によって伝達します。よく持たれがちなGND電極のイメージ、電位が常に0で電流が流れないといった静的なものではなく、Hot側電極と同様な電圧・電流(但し、極性は反対)を持ちます。

少し詳細な説明をしますが、上記の電圧・電流の伝達のある瞬間、Hot側の電極から出た電気力線が全てGND側の電極に到達し、到達したGND電極上に電流を生成し、またその時の逆位相となる瞬間ではGND電極側からでた電気力線が全てHot側の電極に到達し、到達したHot側電極に電流を生成します。

従って、上記の電気力線(Hot⇔GND)が限られた(GND電極で密閉)空間に閉じ込められた状態(一般的には回路基板がシールドケースで覆われた状態)であれば、電気力線は全て密閉空間内に遮蔽され、ノイズ放射に関係する電気力線も閉じ込められます。私の現役時代の経験として、必ずしも完全密閉状態とはならないシールドケースであっても、そのシールドケースの有無で放射ノイズに対して6~10dBのノイズ低減効果があります。

そのためEMC設計の観点から言えば、回路基板をシールドケースで覆って電子機器のフレームに装着するのがよいということになります。しかし、機器の外部への表示部やデータ入力部(スイッチ等も)を装備するために、シールドケースが付けられない場合や、製品の形状・価格の関係からシールドケースを省く場合もあったりすると思います。ただ、そういった場合、前述した電源線や信号線のHot側電極からでた電気力線の一部はノイズ放射に関係するものも含めてGND接続されている機器のフレームにも到達し、フレーム表面にもノイズ放射に関係する電圧・電流も生じてしまいます。

よって、そのような構成(設計)となってしまう場合の注意点について下記に挙げておきます。

①回路基板の機器のフレームへ2か所以上、できれば基板の四隅でフレームにネジ止めを行う。

②回路基板をシールドケースで覆わない場合は、回路基板の表・裏面側が機器のフレームができるだけ対向しない構造を検討する。

③シールドケースが回路基板側の一方側からしか覆わない場合は、シールドケースが機器のフレームと直接DC的に接続できるようにネジ止めする。

④機器のフレーム自体を省寸法(特に長い形状にならないよう)に設計する。

⑤ネジ止め部におけるシールドケース、回路基板の表面のGND電極、機器のフレームは確実にDC的に接続できるようにする。

⑤に関しては、普通に作れば当たり前にそれぞれをDC接続できるのですが、1K、10K台となる量産時などは個々のシールドケースやフレームの表面状況(防錆のメッキ膜の酸化等)でそのDC接続が不安定になったりします。

上記の各事柄については、当社のセミナー“EMC設計 MBDでDX! 技術&学術”の中で詳細を解説致します。ご興味のある方は是非当社のセミナーをご検討下さい。

※関連ページ

  1. ノイズという電磁波。では電磁波とは?(3)

  2. ノイズという電磁波。では電磁波とは?(2)

  3. ノイズという電磁波。では電磁波とは?(1)

EMC設計 MBDでDX! 技術&学術

19. グラウンドループ➡ノイズ放射・・・過剰な妄想かも!

EMC関連の文献では特に低周波帯(といっても30MHz帯といった位でしょうか)でのノイズ放射の原因としてグラウンドループを指摘されることがあります。

このグラウンドループは下図にある様に、装置Aと装置Bがケーブルにより電源及び信号を送受する場合で、且つ装置Aと装置Bがそれぞれ接地(アース)している場合に例えば装置Aから出たノイズの電流がケーブルのGND電極を介して装置Bに流れ込み、更に装置Bの接地端子を通って装置Aの接地端子に戻る(ループを構成する)ことによりノイズが空間に放出されるという考え方です。

このノイズ放射を回避するために、①装置Bの接地をしない、②装置Aと装置Bそれぞれの回路間のGND接続を無くすことはできないですが、少なくとも装置A、Bそれぞれの金属シャーシはGND電極(シールド等)で直接接続させない、といった構成を推奨しています。

こういった構成でノイズが放出されるのであろう、という説明は確かにあり得そうな気がします。しかし、よく説明図を見てちょっと考えるべき点もあります。

I.接地(アース)とは所謂0Vにする点であって、図にある様に装置A、Bの接地箇所で0V(工場・施設内では金属物で接続されるでしょう)で等電位となります。仮にノイズが装置Aにあった場合にどのようにしてケーブルのGND電極に出て装置Bに伝達していくのでしょうか?少なくとも接地電位で囲まれたループ上にノイズとなる励振源があるべきではないか、と考えます。

この励振源については、下図のノーマルモード伝送時にコモンモードのノイズ源が発生するものとして説明されます。しかし、このノイズ源の出現も“何故?“、と疑問があります。しかし、”そういうもの“というのが今までのEMC解説モデルで行われてきました。

II.仮に接地によるループができたとして、ノイズ放射としてループアンテナを想定する方も居られるでしょう。しかし、ループというのは磁界生成(又は検出)する機能しかなく、電波を送出する能力は無いのです。何故なら、磁界に合わせて電界を生成することができないからです。(詳細は当社セミナー“EMC設計 概要~MBD”で解説しております。また、当社ブログ“ループ状配線 ➡ノイズのアンテナは考えすぎ”でも解説。)上図にある様に装置A、Bの接地点で同電位、ケーブルの各接続箇所でも同電位なので電界は生じようがないのです。

ただ、上記それぞれの箇所を接続している“導体には抵抗があるので流れる電流に対して電圧(電界)を持つ”と考える方もいるかもしれません。しかし、その電流を流すためには起電力となる電源がループ上のどこかになくてはなりません。仮にもし微弱な(ノイズ)電流が流れるとしても導体の抵抗により減衰され電流は略0の状態になるでしょう。

今まで述べてきたように装置A、Bによってグラウンドループが構成されたとしても簡単にノイズ放出が起きるというものではないのです。しかし、実際の現場ではグラウンドループが問題なのではないか、と思いたくなるケースを経験したEMC関係者が多く居られると思います。

実は、この問題は装置A、B間を接続するケーブルのGNDラインの処理の仕方に問題があるのです。この課題の背景及びケーブルのGNDラインの処理の仕方の詳細を当方のセミナー及びテキスト“EMC設計 概要~MBD”の中で解説しております。

実際、私も装置(又は機器)を接続するケーブルによる不要輻射の問題をいくつか経験しましたが、全く問題ない場合もあったりしてその違いを見比べ、検討してまいりました。同様な経験をされている方々は是非当社のセミナーを聴講して頂きますと考え方の整理がつくかと思います。

参考記事

21. 機器・装置間の接続ケーブル・・・シールド線(GND)は両端接続が基本!

24. フレームグラウンドにノイズ電流ッ!、、、普通に流れます。