日本人初のESDを体現? 平賀源内のエレキテル

最近テレビの某時代劇の中で平賀源内が活躍するシーンが話題になったりしています。実は私の子供の頃にも平賀源内が主人公の時代劇があってちょっとしたブームになったことがありました。平賀源内と言えば彼が作ったエレキテル(長崎で壊れたオランダ製のエレキテルを入手し、独力で修復したとか)が有名ですが、彼なりの工夫によって世間にお披露目できたようです。エレキテルに関してはインターネット検索等で調べてみると、所謂摩擦電気(静電気)を利用したもので、起電機の類のようでした。

現在に比べ材料(素材)が限られていた江戸時代で、摩擦電気(ESD)に必須となる絶縁度が高い材料及びその組み合わせはどうしたのでしょうか?既にガラス材料(ライデン瓶等)はあったようですが、その材料をどう加工したのか?また、導体となる金属材料に関しても線材や板材(金箔等はありますが)が無い時代にどうやって極材にしたり配線をしたりしたのでしょうか?今に比べいろいろ制限のある時代。無いなりの工夫をしたのでしょう。

ただ、江戸時代の人々にとってESDによる火花放電は見世物にもなるくらいだったので、珍しい光(閃光)であって、通常生活ではなかなかお目にかかることがない現象だったのかもしれません。そのうえ医療器具(迷信じみていますが)としても使えるなどと考えたようなので、縁起かつぎや邪気を払う目的で“切り火”を使って火花を見ていた人々にとって、雷は嫌いでも小さな火花に対する気持ちは肯定的なものだったのかもしれません。

今の時代においては、プラスチックを始め絶縁性の高い素材が生活の中にあふれていますので、静電気は極めて身近に経験する現象になりました。私たちが普段着る衣料について見てみると、その材料は高分子系の化学素材であり、その分子構造は電荷(電子)の偏りを有している(分極のし易さを意味します)と共に素材自体の絶縁性の高さ(当社の“ESD設計 技術&学術”で解説しています)から異なる素材の重ね着などをした時などは、異なる素材(衣料)間の擦れ合いにより素材間の電位差の上昇と帯電(蓄電:電圧維持)が起こり易くなります。その帯電(電圧)は人体表面(高抵抗ですが導電性なのです)を通して電荷を押し出す作用により指を介してドアノブなどのヒトが触れる金属に放出されます。即ち、指先で起きるあの“バチッ”(火花放電)が起きるのです。見方を変えれば、現代人はみなあのエレキテルを身に着けているともいえるのです。

静電気による指先の“バチッ”(ESD)は誰もが避けたい嫌なものでしょう。しかし、現在の人々はそれを避けることは困難です。もし、このESDを避けたければ、常に絶縁性のある手袋をして生活する方法があります。ただまあ四六時中手袋をするのが嫌なら、江戸時代のように木綿や麻の服を着、わらの草履を履くといった格好で、旧来の木造の家に住み、木材の道具を使った仕事をするという生活様式にすればESDとは無縁になれるでしょう。できるかどうかは分かりませんが。

結局のところ、現代の私たちは静電気(ESD)と共に生活しなければならないのです。そのため電子機器にとってESD耐性は必須のイミュニティということになります。当社は、ESDに関します資料の公開や無料のセミナーも行っております。お問い合わせを頂けるとありがたいです。

尚、上記した起電機と言えば現在では理科の実験室等で見かけるバンデグラーフ起電機(大きな銀色の金属玉が付いた装置)が有名です。この装置はベルトと2個のプーリーとによる異なる材料の表面間に生じる電位差を利用して火花放電を発生させることができます。ただバンデグラーフ起電機では所謂材料同士が擦れ合うような摩擦機構はありません。(“ESD設計 技術&学術”で解説しております。)起電機は高電圧を発生させることはできますが、継続的に放電電流を流せない性質があります。当然ながら湿度にも影響されます。そのためその放電電流を維持させる(電荷を溜めては放出を繰り返す)ために蓄電器の機構が構成されています。因みに、電気を起こす装置は“発電機”では、と思われる方もいるでしょう。一般的には“発電機”は磁界変化をコイル口に与えて電気を発生させる方法(ファラデーの電磁誘導の法則の応用)のものを指します。発電機は継続的に磁界変化(磁石のNS極の回転運動)させることで継続的に電流(交流)を流すことができます。

話は変わりますが、私の現役時代にお世話になったある営業の方に、“コンデンサ(キャパシタ)は電荷を溜めるから蓄電器。ではコイル(インダクタ)は?”、と聞かれたことがありました。ある人は磁気を溜めるから蓄磁器では、などと言っていましたが、今の私としてはコイルに流れ込む電流に対してコイル側がそれを阻止する電流を自身が発電(起電)して流しだす性質なので“発電器”では、と言いたいですが、如何でしょうか?

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EMC設計、“勘と経験”はDXの障害になっているかも・・・

日々商品を送り出す現場の中で、EMC課題に取り組まざるを得ないEMC関係者もおられるでしょう。それぞれのメーカー様では新商品送り出し(ローンチ)の現場でもしEMCが問題になって、更に手詰まりの状況になっているとしたら、ローチスケジュールをキープできるかEMC担当も責任者も気が休まらない時間が続くでしょう。

商品のEMC対策の現場で打つ手としては大概下記のようなことではないでしょうか。

①ハーネス、ケーブルがある機種では先ずは姿勢調整・ケーブルのフレームへの貼り付け等

②ハーネス、ケーブルのフェライトコアの装着・追加

③回路基板の電源系パターンとGNDパターン間へのパスコンの追加

④回路基板の信号ライン(CLK等)へのビーズの挿入・コンデンサの付加

⑤問題のノイズ帯域を抑制するために何らかのフィルタを装着

等、このような手を打つのが常套手段でしょう。これで課題解決すればよいのですが、解決しなかった場合が大変なことになる訳です。ましてEMIの規格値に対して依然として10dB以上オーバーしているとしたらもう打つ手はない厳しい状況でしょう。

ただ、そんな時に実際にその対策を担当している方はその原因が自分に責任があるかのように考えてしまうことだけは絶対にしないで頂きたいです。何故なら、その原因は回路設計や実装設計の“不味さ”(たまたまその知識・情報がない)だからです。この状況にEMC対策に慣れた勘と経験のある年季の入った技術者が登場しても状況の改善は難しいでしょう。(この状況の中でズブの素人が出てきて一気に課題を解決に向かわせたという話(伝説)をよく聞きますが、真偽はともかくそういう願いがどこにでもあるからなのでしょう。)

先に記した回路設計の“不味さ”を理解して頂くために、当ホームページで紹介しているPD適用SD適用を是非検討して頂きたいです。PD適用SD適用を回路図設計段階に行うことで定量的な評価によりEMI(不要輻射)のリスクを事前に回避することが可能なのです。また、実装設計、特に回路基板設計(A/W)に関しては当社が提案しているWDの実践によりPD適用、SD適用で設計したEMI低減効果を実効性のあるものにすることができます。こういったEMC設計は事前にEMIのリスク回避として実施しておくべきことなのです。

当ホームページで紹介している、PDSDWDの検討はPC、即ち所謂デジタルの状態で行われますのでDX時代のEMC設計手法と考えておりますが、勘と経験を強み(と思い込んでいる)としている回路設計・実装設計の技術者にとっては面倒くさく、時間の無駄な方法のように思えるかもしれません。確かに、設計ツール(シミュレータ)をオペレートする(知る・勉強する)には時間を要します。しかし、一旦習得できればその後は時間を要することなくいろいろな状況で利用・応用することができます。今までの勘と経験の技術にも定量的な理解ができるようになります。更に、新たにEMC設計を行う新人に対しても勘と経験を前提とした指導をすることなく、ツールを用いて定量的にEMC設計を指導することができます。

モノ作りの現場は人手不足・技術者不足になりつつあるでしょう。よりスムーズ(時間の無駄なく)にモノ作りを進める上でDXは必要不可欠です。勘と経験での連戦錬磨のEMC対策の技術者が高齢・引退していく状況を憂いている方もいるかも知れませんが、寧ろそういった憂いを切っ掛けにEMC設計のDXに大きく踏み出して頂きたいです。

当社は、PDSDWDに関する資料の公開や無料のセミナーも行っております。お問い合わせを頂けるとありがたいです。

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