今年も梅雨の時期となり、EMC試験の現場では試験環境の湿度は高くなりがちではないかと思います。静電気、放電といった言葉を聞くと“空気の乾燥”が原因と考える方が多いと思います。それは自然界における静電気現象として正しいのですが、EMS(イミュニティ試験)としての放電・サージ関連の試験は実は湿度が高い方が機器・装置にとって不具合発生のリスクが高まります。(詳細については当方のIEC61000(Part-I)及びコンサルブログ“空気の乾燥はESD(静電気)対策の大敵?”の中で解説しております。ご興味のある方はそちらを参考にしてください。)
この辺が、ESD試験が実際のESD現象とは異なるメカニズムである反証となるのですが、でもまあESD試験をパスすることが開発機器を一般市場に出すためのルール(規格)として必要になるので、試験をパスさせるための対策作業が必要になる訳です。
かつて私もESD試験の現場で原因のよく分からない不具合発生とその対策に結構苦しめられた経験があります。その当時はESD試験に関する原理やメカニズム等を全く理解していなかったため、何か機器・装置にそれらしい対策を施してひたすらESDガンの引き金を引いておりました。当然のことながら対策が上手く行かず暗礁に乗り上げて、対策が行き詰まる状況になったりしました。
ただ、ESDパルスの印加と不具合発生に関してパルス印加による機器・装置内での2次放電発生の関係に気づいてからは不具合発生の対策方針を立てやすくなりました。この2次放電の発生は、対策環境の湿度が高くなると発生しやすくなる傾向にあります。少なくともESD試験の湿度範囲(相対湿度 30~60%)で、できれば低めの湿度で行うべきです。大概、ESD対策時の担当者はESDガンの設定電圧や打ち込み回数・頻度を高めに設定して行うでしょうから、湿度を低めの状態で試験を行っても機器・装置の耐ESD性能の評価に問題は無いでしょう。
尚、ESD試験対策として有効な施策の例については、当方のIEC61000(Part-II)の中(セミナー)で解説しております。是非参考にして頂きたいです。
この時期のESD試験を行うシールドルームの壁面等は冷房等により結露が生じ易い状態になっていないでしょうか?もし結露が生じるような状態でしたら是非、試験環境の湿度を気にして頂き機器・装置のESD試験対策をやって頂きたいです。
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