機器・装置/ロボットにトラブル発生!不具合解析に行き詰まったら...

かつて某放送局で放送された高専や大学関係のロボットの競技会(ロボコン)を見ていた時に、大会当日のロボットの調整中に突然制御不能の不具合に陥り、学生達のその場の対処も空しく競技に出場できないシーンがありました。また、別のロボコンの大会でも競技中にそれまで上手く動作していたロボットが突然不具合に陥り競技続行ができなくなるといったシーンもありました。

こういった原因の良く分からない不具合発生は一般的な電子機器(特に可動部を有する機器)においても起こり得ることで、機器設計の現場では把握できず製品を出荷した後お客様の使用現場で発生してクレームになったりします。

こういった不具合は機器設計の現場では再現が難しく、また通常(と思われる)場では全く問題もなく動作し、原因解析をしてみてもよく分からなかったりして、”まあ、取りあえずいいか”という感じで放置されがちです。

一般的な機器設計の現場においては、こういった原因不明な不具合への解析方法に決定打はなく、もし検討するとすれば、誰でも先ず多分原因の仮説をいくつか立てて系統化して(QC手法の特性要因図のような)それらを実測等により各仮説を検証して原因究明する方法をとるでしょう。しかし、この方法の問題点は真因になるもの又はそれに関連する発想・考察が列挙した仮説の中に無ければ時間と手間の無駄となります。

こういった不具合対策関係のセミナーに参加したこともありますが、①機器自身からのノイズ、②他の機器からのノイズ、③周囲環境(作業場)と電源・アース(伝導ノイズの関係)、と言ったところから調査を始めるようですが、ただまあ、よくありがちな先ずノイズを疑うという常套手段のようなものでした。またこれに関連するのですが、私が過去に目にした機器の不具合対策で上記の②に関連したノイズを疑って調べていた同僚がいましたが、それは全く無意味なものでした。仮説という名の単なる思い込みから始めたようですが、そもそもEMC規格を満たして出荷されてきている他の機器が原因になることはまずないからです。

よくわからないノイズの影響を求めて原因の調査をはじめるのも一つの方法かと思いますが、場合によってはESDの影響を考慮することも必要なのでは、と考えています。私の過去の不具合解析でも機器の動作中でのESD(火花放電)の発生を間接的に計測機で観測し、その発生を対策することで不具合を起き無くした(解決した)例が幾つかあります。

特に火花放電はモーターによる可動部を有する機器で起きやすく、その発生メカニズムを理解していると早く不具合原因に行きつけます。私の過去の例では1年以上解決されなかった機器の不具合を1日で解決できたこともあります。

ESDの現象は回路学的なアプローチとは異なり、むしろ物理学的(静電気学・放電工学)な考え方を必要とします。しかし、ESDが原因と考えてESDガンで不具合現象の再現を試みている技術者がいたりしますが、その方法はたいてい不具合解析に失敗します。何故なら、不具合発生時の火花放電とESDガンのそれとは発生メカニズムが全く異なるからです。更に、ESDに関する知識についても一般生活で経験しているレベルにとどまっている人は不具合発生時の大事なサインを見逃します。

原因がよくわからない機器の不具合対策でESDについて調べてみたい方は、当社のセミナー“6.1.静電気に関する理論的解説・メカ設計”はお薦めです。またこのセミナーのテキスト(有料)を当ホームページに掲載する予定ですので、ご利用ください。

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