ESDスキャナで観測。でもやっぱり対策はいつものGND強化?

最新のESD対策のツールとしてESDイミュニティースキャンという評価システムが米国の会社より紹介されています。既に大手メーカーが採用しているようでした。そのシステムの概要は、ESD試験(IEC64000-4-2)に近いパルスを近傍界プローブよりピンポイントで回路基板上の任意の箇所に照射して、その際に生じる回路機能の不具合を感知する、といったことを回路基板の目的の領域に対して繰り返し行い(スキャニング)ESDパルスに対する脆弱な領域をマッピング・可視化することで機器に対するESD試験における不具合対策を検討・実施するというものです。

さすが、“ESDの脆弱箇所を可視化する”という発想が素晴らしいと思いました。この結果と従来から紹介されているESDパルスの電流の拡散状況を重ねることで、どこでESD試験による不具合を起こしている(又は起こす可能性が高い)かを見出すことができる、ということになる訳です。素晴らしいです。

ただ気になるのは、ESDパルスに対する脆弱箇所を可視化できたとして、次にそれに対してどう対策すべきかは自分で考えなくてはならない点です。センスがよい技術者はその対策方法に行きつけるかもしれませんが、多くのEMC担当者にとってはキビシイものかもしれません。

最近、上記システム(ツール)を利用して製品のESD試験対策を行ったユーザーさんによるプレゼンを聴講させて頂く機会がありました。そのユーザーさんは製品の不具合とESDの脆弱箇所との関連付けに成功したように見えました。ではその結果に基づきどういった対策をとるのかちょっと期待を寄せていたら、対策現場でよく行われる基板のGNDと機器のフレームとを銅箔で貼る(所謂GND強化?)、不具合に関係するICの端子にパスコンの追加、といったところでした。その対策がベストであったとして、使ったシステムの結果との関係性(どうやって対策方法に至ったのか)についてもう少し聞きいてみたいと思いました。あまり詳細な説明はできないといった制約があったのかもしれません。しかし、実施された対策方法が現場の担当者なら誰でもトライする方法なので、もしこの程度のものなら現状のESD対策の現場を改善とか・新たな展開を期待することは難しく、新たなシステム(ツール)を導入するメリットは小さいように思われました。

やはり、先ずESDに関する技術的・学術的理解を深めるべきです。“機器に何が起きているのか“の考え無しで、勘と経験とか導入するツールに頼ってESDの対策をするのは時間の無駄遣いに陥り易いものです。

是非当社のESDに関するセミナーをご参考にされることをお勧めします。

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