電子機器の設計の際、電子機器を構成するフレーム(シャーシ)に電子機器を制御する回路基板を装着する方法に関しては、どこのメーカーさんでも機器の外観や形態/機器の機能性/製造(組み立て)上の効率性等を優先的に考慮して設計されているのではないかと思います。もし、EMC設計的な考え方も考慮されているようでしたら、完璧です。
しかしながら、もしEMC設計的な考え方なく回路基板の装着設計をされているようでしたら、是非参考にして頂きたい事柄をここで述べたいと思います。
電子機器・装置は電気的な安全設計及び耐イミュニティーの関係から、そのフレーム(シャーシ)は基本的に接地側の電位に設定されます。但し、その接地電位を地上接地(アース)と接続させるかどうかは機器の安全規格等によりますが、必須ではありません。また、その接続の有無はノイズの不要輻射とは直接関係が無い場合が多いです。
先ず、重要なことは電子機器のフレームは回路基板の接地側(GND)の電位に設定されることです。当社HPの記事“13. ノイズという電磁波。では電磁波とは?(3)”でも解説していますが、実際の回路においては電源・信号等の電力を活線側(Hot側)の電極とGND側電極とで対をなしてそれぞれの電極に生じる電圧・電流によって伝達します。よく持たれがちなGND電極のイメージ、電位が常に0で電流が流れないといった静的なものではなく、Hot側電極と同様な電圧・電流(但し、極性は反対)を持ちます。
少し詳細な説明をしますが、上記の電圧・電流の伝達のある瞬間、Hot側の電極から出た電気力線が全てGND側の電極に到達し、到達したGND電極上に電流を生成し、またその時の逆位相となる瞬間ではGND電極側からでた電気力線が全てHot側の電極に到達し、到達したHot側電極に電流を生成します。
従って、上記の電気力線(Hot⇔GND)が限られた(GND電極で密閉)空間に閉じ込められた状態(一般的には回路基板がシールドケースで覆われた状態)であれば、電気力線は全て密閉空間内に遮蔽され、ノイズ放射に関係する電気力線も閉じ込められます。私の現役時代の経験として、必ずしも完全密閉状態とはならないシールドケースであっても、そのシールドケースの有無で放射ノイズに対して6~10dBのノイズ低減効果があります。
そのためEMC設計の観点から言えば、回路基板をシールドケースで覆って電子機器のフレームに装着するのがよいということになります。しかし、機器の外部への表示部やデータ入力部(スイッチ等も)を装備するために、シールドケースが付けられない場合や、製品の形状・価格の関係からシールドケースを省く場合もあったりすると思います。ただ、そういった場合、前述した電源線や信号線のHot側電極からでた電気力線の一部はノイズ放射に関係するものも含めてGND接続されている機器のフレームにも到達し、フレーム表面にもノイズ放射に関係する電圧・電流も生じてしまいます。
よって、そのような構成(設計)となってしまう場合の注意点について下記に挙げておきます。
①回路基板の機器のフレームへ2か所以上、できれば基板の四隅でフレームにネジ止めを行う。
②回路基板をシールドケースで覆わない場合は、回路基板の表・裏面側が機器のフレームができるだけ対向しない構造を検討する。
③シールドケースが回路基板側の一方側からしか覆わない場合は、シールドケースが機器のフレームと直接DC的に接続できるようにネジ止めする。
④機器のフレーム自体を省寸法(特に長い形状にならないよう)に設計する。
⑤ネジ止め部におけるシールドケース、回路基板の表面のGND電極、機器のフレームは確実にDC的に接続できるようにする。
⑤に関しては、普通に作れば当たり前にそれぞれをDC接続できるのですが、1K、10K台となる量産時などは個々のシールドケースやフレームの表面状況(防錆のメッキ膜の酸化等)でそのDC接続が不安定になったりします。
上記の各事柄については、当社のセミナー“EMC設計 MBDでDX! 技術&学術”の中で詳細を解説致します。ご興味のある方は是非当社のセミナーをご検討下さい。
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