11. ノイズという電磁波。では電磁波とは?(1)

昨今のEMC対策セミナーで講師の方々は、ノイズは電磁波であるということを説明され、下記のMaxwellの方程式を示されて、電磁波の本質(?)であると説明します。

dirD = ρ          ・・・(1)

dirB = 0           ・・・(2)

rotE = -∂B/∂t       ・・・(3)

rotH = J +∂D/∂t  ・・・(4)

B =μH, D =εE

セミナーの受講者で上記式を見せられた多くの人にとっては、何を言いたいのか全く理解できないでしょう。また電磁気学を習った経験がある人にとっても”だから何なの?”、と思うでしょう。

仮にEMC対策を担当されている方々がMaxwellの方程式をおぼえたとしてもそれを利用する場面はあまり無いでしょう。但し、電磁波の知識を深めるという点は期待できます。

ただ、下記の性質をMaxwellの方程式が示していることを理解して頂けると当社のEMC設計を深く理解する上で役立ちますので少し説明をしたいと思います。

その前に、先ず空間を伝搬する電磁波(電波)を考える上では、J =0であって、

rotH = ∂D/∂t ・・・(4*)

となります。当たり前ですが、電流が空間を流れることは無いからです。(回路基板上の配線を流れる電磁波(電流)を扱う際はJ ≠0となり式(4)の右辺を変形していきますが詳細は別の機会に)

また、式(1)についても

dirD = 0        ・・・(1*)

とおくことになります。(1)の式でもρ = 0を含んでいると考えることもできますが、ρ = 0とρ ≠ 0には大きな差があります。

先ず、そもそも演算子dirは、例えばベクトルAのある空間中でdirAを行うことで、その空間のあらゆる場所で、dirAが正なら湧き出しが、dirAが負なら吸い込みがあることを示します。これに対しdirA = 0ということは、ベクトルAは空間のあらゆる場所で湧き出し量と吸い込み量が等しいということになります。

ρ ≠ 0は静的電場(単一電荷が存在する状況で、所謂ESDを扱う条件下等)において成立し、物体が正又は負に帯電した際に張られる電場を示しています。しかし、電圧と電流により電力の入出力を行う、所謂直流・交流といった電気を扱う領域ではρ = 0となります。これは電荷が無いという意味ではなく、電圧と電流により対象とする電気の周囲の空間に張られる電場(E )は至る所で吸い込む電場(電気力線の数:電荷密度としては-ρ)と湧き出す電場(電気力線の数:電荷密度としては+ρ)が等しい状態になるためです。

磁場(H )に関してはご存知のようにN極から出た全ての磁力線がS極に至る性質があるので、周囲の空間は至る所で(吸い込む磁場)=(湧き出す磁場)の関係になり(2)の式となります。

よって上記のMaxwellの方程式は電磁波(直流から高周波)においては

dirD = 0         ・・・(1*)

dirB = 0          ・・・(2)

rotE = -∂B/∂t    ・・・(3)

rotH =∂D/∂t  ・・・(4*)

となります。

ここで気になるのがrotという演算子ですが、rotAは、ベクトルAの方向に対する垂直面内における回転ベクトルを示しますが、ベクトルAとベクトルrotAは垂直の関係だということが重要な点です。よって式(3)、(4*)から電場Eと磁場Hは垂直の関係であるということと、電場Eと磁場Hの一方が減少又は0になると、他方も減少又は0になり、即ち伝搬する電磁波は減少又は0になるということです。しかし、式(3)、(4*)からは時間微分された電束密度Dと磁束密度Bではないかと疑問を持たれる方もいるかもしれません。これは

                       D =D(r)TD(t)= εE(r)TD(t)

                        B =B(r)TB(t)= μH(r)TB(t)

とおいても(1*)~(4*)の式を満たすことができ、電場E 、磁場H の解とすることができるためです。よって、電場E 、磁場H のベクトル方向は時間の偏微分をしてもベクトル方向が変わることは無いのです。

(1*)~(4*)の式に対して、一方向(y方向)に進む電磁波(高周波のイメージで)の電場E 、磁場H について、ある条件を付けて解を求めると、

                       EEx・exp{2πj(f・t) }

                      HHz・exp{2πj(f・t) }

                             λ :電波の波長、f :電波の周波数

となります。この時のある条件とは、電波の伝搬方向(y方向)に対して電場E 、磁場H がベクトル成分を持たない(E = 0H = 0 )という条件です。実はこの条件が空間を伝搬する電磁波(基板上の配線を伝搬する場合も含みます)の重要な性質となります。電波工学ではこのような電波の伝搬形態をTEMモード(電波の伝搬方向に対して横方向に電場E 、磁場Hがある)と呼び、電波を扱う上で重要な性質となります。尚、E = 0H = 0ではない電磁波の伝搬モードも当然のことながら存在します。しかしEMCを対象とする場合は殆ど考慮する必要は無いのでこの場での説明は省略します。

今回は取りあえずこの辺で一旦EMC設計上重要な点をまとめさせていただきますと、

①電磁波の電場Eと磁場Hは垂直の関係です。

②電場Eと磁場Hの一方が減少又は0になると伝搬する電磁波も減少又は0になります。

③電波はTEMモード(電波の伝搬方向に対して横方向に電場E 、磁場H )です。

是非、心に留めておいて下さい。

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