19. グラウンドループ➡ノイズ放射・・・過剰な妄想かも!

EMC関連の文献では特に低周波帯(といっても30MHz帯といった位でしょうか)でのノイズ放射の原因としてグラウンドループを指摘されることがあります。

このグラウンドループは下図にある様に、装置Aと装置Bがケーブルにより電源及び信号を送受する場合で、且つ装置Aと装置Bがそれぞれ接地(アース)している場合に例えば装置Aから出たノイズの電流がケーブルのGND電極を介して装置Bに流れ込み、更に装置Bの接地端子を通って装置Aの接地端子に戻る(ループを構成する)ことによりノイズが空間に放出されるという考え方です。

このノイズ放射を回避するために、①装置Bの接地をしない、②装置Aと装置Bそれぞれの回路間のGND接続を無くすことはできないですが、少なくとも装置A、Bそれぞれの金属シャーシはGND電極(シールド等)で直接接続させない、といった構成を推奨しています。

こういった構成でノイズが放出されるのであろう、という説明は確かにあり得そうな気がします。しかし、よく説明図を見てちょっと考えるべき点もあります。

I.接地(アース)とは所謂0Vにする点であって、図にある様に装置A、Bの接地箇所で0V(工場・施設内では金属物で接続されるでしょう)で等電位となります。仮にノイズが装置Aにあった場合にどのようにしてケーブルのGND電極に出て装置Bに伝達していくのでしょうか?少なくとも接地電位で囲まれたループ上にノイズとなる励振源があるべきではないか、と考えます。

この励振源については、下図のノーマルモード伝送時にコモンモードのノイズ源が発生するものとして説明されます。しかし、このノイズ源の出現も“何故?“、と疑問があります。しかし、”そういうもの“というのが今までのEMC解説モデルで行われてきました。

II.仮に接地によるループができたとして、ノイズ放射としてループアンテナを想定する方も居られるでしょう。しかし、ループというのは磁界生成(又は検出)する機能しかなく、電波を送出する能力は無いのです。何故なら、磁界に合わせて電界を生成することができないからです。(詳細は当社セミナー“EMC設計 概要~MBD”で解説しております。また、当社ブログ“ループ状配線 ➡ノイズのアンテナは考えすぎ”でも解説。)上図にある様に装置A、Bの接地点で同電位、ケーブルの各接続箇所でも同電位なので電界は生じようがないのです。

ただ、上記それぞれの箇所を接続している“導体には抵抗があるので流れる電流に対して電圧(電界)を持つ”と考える方もいるかもしれません。しかし、その電流を流すためには起電力となる電源がループ上のどこかになくてはなりません。仮にもし微弱な(ノイズ)電流が流れるとしても導体の抵抗により減衰され電流は略0の状態になるでしょう。

今まで述べてきたように装置A、Bによってグラウンドループが構成されたとしても簡単にノイズ放出が起きるというものではないのです。しかし、実際の現場ではグラウンドループが問題なのではないか、と思いたくなるケースを経験したEMC関係者が多く居られると思います。

実は、この問題は装置A、B間を接続するケーブルのGNDラインの処理の仕方に問題があるのです。この課題の背景及びケーブルのGNDラインの処理の仕方の詳細を当方のセミナー及びテキスト“EMC設計 概要~MBD”の中で解説しております。

実際、私も装置(又は機器)を接続するケーブルによる不要輻射の問題をいくつか経験しましたが、全く問題ない場合もあったりしてその違いを見比べ、検討してまいりました。同様な経験をされている方々は是非当社のセミナーを聴講して頂きますと考え方の整理がつくかと思います。

参考記事

21. 機器・装置間の接続ケーブル・・・シールド線(GND)は両端接続が基本!

24. フレームグラウンドにノイズ電流ッ!、、、普通に流れます。

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