8. ノイズも電磁波。検出するのはアンテナ?プローブ?

通常EMC技術者は放射ノイズ(EMI)対策に関して、その3要素、”①ノイズ源”、”②伝送路”、”③アンテナ”を挙げるでしょう。故に、EMI対策の基本は”①ノイズ源のパワーを抑える”、”ノイズを②伝送路で遮断する”、” ③アンテナとなる筐体(フレーム)・ケーブルの形状をノイズ放射し難い形態にする”、といったことを検討します。しかし、①につては、IC内部の半導体のスイッチング特性(スルーレート)等によるものなので、セットメーカーの設計者としては調整の余地はありません。特に最新のICは半導体の微細化によってスルーレートが上昇し、動作クロックに関係なく不要輻射となるノイズのパワーは上昇しています。また③については設計する製品の外観・コンセプトにも関わる事になるので、EMI対策のためにフレーム(筐体)を変更するなどということは極めて難しいと思われます。そもそものEMI対策を考慮した製品のフレーム形状などというような設計要素を提案すること自体が困難です。

そこで、通常は②に注目してEMI対策するということになります。最もよく使われるのがEMC対策部品を伝送路上に付加するということになります。しかし、上手く行く場合もあれば、そうは行かない場合もあります。現場でEMI対策するEMC技術者は何とか担当する機器を次工程の設計・評価に送り出すためにあの手この手の調整を②に対して行い、何とかEMI対策を完遂していきます。本当に感心します。

ただ、こういったEMC技術者に対してもう少しノイズについて理解しておいて頂きたいことがあります。ごく当たり前のことなのですが、ノイズも電磁波であるということです。即ち、ノイズは空間を伝播する電波(電磁波)であると共に、回路基板上の配線においても電磁波であるということです。ノイズが電磁波であるということは、電磁気学的な振る舞いをするということと、電磁波であるので伝搬モードを持ち、波動性を持っているということです。これらを理解するためには、やはり専門的な知識の習得が必要となります。(専門的な知識よりも実践方法を熟知し、結果を出せればよいという考え方もあると思います。結果として課題が解決していれば問題はないのですから。)

前述の③アンテナについても電磁波の出入り口の中心となる給電点(Feed Point)の考え方が重要です。アンテナと言っても電波の送受信の機能を果たす装置としてのアンテナに比べて、ノイズを放射するアンテナ(機器のフレームやケーブルを素子(Element)とする)の電磁波放射性能は極めて低いのです。実はこの低さが機器のフレームやケーブルを多少変更してもEMI対策として効果が上がらない理由にもなっています。そのためアンテナの形状(素子)に目を向けるよりも給電点に注目することが重要になる訳です。

また、電磁波を検討していく上で近傍界と遠方界という放射源と受信点との間の距離における変化点があります。詳細については別の機会で説明しますが、EMIとして測定されるのは遠方界の電磁波であり、評価機器から距離3m或いは10mでの電界強度(dBμV/m)として評価されます。EMI対策に際して近傍界プローブによるスキャン解析を使うEMC技術者は特に近傍界と遠方界の違いをよく理解しておく必要があります。時としてそのような近傍界解析に費やす時間が無駄になる場合が出てくるためです。

ノイズは電磁波であることを理解して頂くことで、ノイズが如何に機器から放射されるかというメカニズムも理解できるようになります。これらの詳細については当社の”EMC設計・背景説明”の中でご説明致します。また、伝送路においてどのような対策をすればよいかを提案しているのが当社の”PD適用”や”SD適用”です。是非、ご検討頂きたいと思っております。

因みに、回路基板上の配線に関してEMC関連の文献やハウツー本で、配線長が長くなることによる配線のループアンテナ化に関する記載がよく見られます。確かに配線パターンの見た目からループコイルで磁界を放出するイメージを持っているのかもしれません。もし仮に、高周波帯(UHF帯以上)で使われるループ形状のアンテナ(ループ八木アンテナ)をイメージしているとしたら、そのループは磁界を検出する機能ではなく、電界を検出する機能としてのループ形状です。実際のループ八木アンテナは全エレメント(素子)を電波渡来方向に向けて、各ループの開口面を電波の電界と磁界の方向に対して平行の関係にしているので、磁界検出では無く、電界検出のエレメントとして機能します。

また、1ターンのループコイルをイメージしているとするなら、コイルの開口面を通過する磁界を検出するプローブと解釈することは可能です。しかし、プローブはアンテナと異なり、遠方界の電磁波を放出することはできません。これはコンデンサやコイルがアンテナにならないのと同じです。アンテナをよく理解されている方は、送信・受信は等価であるということをご存知でしょう。しかし、これはあくまでアンテナにおいて成り立ち、プローブでは成り立ちません。これらの詳細につきましては次の機会に解説したいと思います。

述べておきたいことは、回路基板に対する近傍界解析×ループ形状の配線→ノイズ放射、というようなイメージの結論からはEMI課題を解決できないどころか、大変な迷走の道に向かう危険性があるということです。

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