電子機器のEMCノイズの評価において、電子機器から放射されるノイズ(不要輻射・EMI)の対策に多くの時間を費やしてしまうケースが結構あります。このEMI対策するために現場のEMC技術者は現場で出来得るいろいろな方策を繰り出して何とか”EMIを規格値+マージン3dB以上”を確保させてEMI対策を完遂させます。EMIの状況がよくない場合などは、現場のEMC技術者の負担は相当なもの(逃げ出したくなるほど)になったりします。
EMI対策として、回路基板上に実装するEMCノイズ対策部品としてEMIフィルタ(EMCノイズフィルタ)がEMCノイズ対策部品メーカーから提案されています。それらはビーズ素子のような単体部品やLC構成を1個の部品に集積したEMIフィルタなのですが、何となく気になるのがフィルタという扱いです。
フィルタ(高周波帯向け)とは、通過帯域と阻止帯域を設定して、通過帯域ではインピーダンス整合化させ、阻止帯域ではインピーダンス不整合化させる特性を持たせて、通過帯域の信号のみを回路後段に送るもので、当然のことならがアナログ回路の手法です。
しかし、ロジック回路の信号に対してフィルタというのは違和感があります。EMIフィルタ搭載によってEMC評価での結果で、EMI対策完遂、電子機器性能不具合無し、という結果が得られたということで、その場は収まるのかもしれません。しかしEMIフィルタ搭載によって、実は問題箇所に関わった搭載部品及びその実装方法、更にそれに関わる配線設計に根本的な問題があったことを見えなくしてしまっているのかもしれません。
ロジック回路における矩形波をノイズフィルタ(アナログフィルタ)を通すと、出力される信号は基本波の正弦波に近づきます。ロジック回路をあまりよく知らない人は、高調波ノイズが無くなってEMI対策として好ましいのではないかと思うかもしれませんが、ロジック回路にとっては全く良くないのです。先ず、正弦波化することで、矩形波で言うところのセットアップ・ホールドタイムの確保ができなくなり(回路動作の不安定化)、またロジック電圧に対してオーバー・アンダーシュートが発生(MOSゲートにおける破損)、更にはインピーダンス不整合帯域における反射によりEMIフィルタの入力端側の配線において定在波が生じやすくなり、これが新たなEMIの原因になる場合があります。特にハーネス(ケーブル)を使ってロジック信号を伝送する場合は注意が必要です。
やはり、ロジック回路にはノイズフィルタが無いのが普通の景色です。そういった状況になっているかを回路図段階で検討できるのが、当社の“SD適用”です。是非ご検討頂きたいです。