回路基板の構成で、例えば4層基板の第2層目をベタGNDパターンにするのは定石のなようなものであって、これをもって、強化(限られたパターン領域において支配的?某国の領土のように?)というのであれば正しいでしょう。ベタGND即ちGND側電極の共用化は、回路基板内の各活線(信号/電源)を目的のポイント間で配線する際に、回路基板のいたる所で対向極(GND)電位を確保できるという点で、配線設計の上での消費面積を小さくできる点でも優れています。
よって、多層基板内のベタGNDは基板設計上不可欠な設計方法と言えます。また、配線パターンとなる活線側から出る(or入る)電気力線が常に対向するGNDベタパターンに向かう形態(モード)になるので、EMCの観点からも好ましい構成と言えます。電磁界シミュレーションで確認できますが、活線パターンとGNDパターンの対向している領域(絶縁層)に電界が集中し、対向した各電極の表面側にそれぞれの電流(流れ方は反平行)が集中します。GND側がベタパターンであってもその電流分布が広がることはありません。
しかしながら、EMCに関するハウツー系の解説では
①ノイズの逃す先のGND
②GNDのインピーダンス(インダクタンス)を低く抑える/GND間での電位差がノイズに
と言ったGND-ノイズに関する記述が沢山あります。しかしながらこれらはイメージであって、誰もそれを測定したり計算したりして定量的に確認したことが無いものなのです。
そもそも、回路基板上の電気は2極(⊕と⊖/活線とGND)の電極によって2極間の電位差として伝達されます。(詳しくはこちらページで!)また、GND電極側をリターンパスとよく記述されていますが、高周波(交流)信号が伝達される際は見かけ上活線側がGND側に対する高周波電流のリターンになる瞬間(位相)もあるわけです。このリターン(直流・交流を問わず)の考え方は慣用的なものであってEMC関係の初心者向けに分かり易く説明するための所謂“EMC解説モデル”によるものなのです。
この“EMC解説モデル”によりGNDに関して上記の①②の解説が行われています。実際EMI対策の現場でGNDに関わる施策により不要輻射の傾向が変化する状況を経験するとGNDに対する信望(救いの神)の様な思いを持つようになるのかもしれません。
しかし、上記の①に関しては実際のGNDパターンは電源ラインや信号ラインにおける対向極でしかないので、ノイズを吸収したり、貯めたり、電源側に戻したりする機能はありません。
また、②に関しても高周波回路を勉強された方ならわかると思いますが、2極の伝送路では高周波の波動性から異なる箇所での活線とGND間の電圧/電流(同一時間で)は異なりますが電力としては同一なので、一定値の負荷の端子においては必要とする電圧/電流を確保することができます。従って、回路基板上の大概の2極の伝送路では送受信間で必要とする電圧のやり取りが可能です。(但し、極端に伝送路が長い場合や、周波数が1GHzを超える信号等の場合は他に考慮すべき事柄が出てきます。)
“EMC解説モデル”は“あくまでそのように説明できる”、と言ったものなので計算式は無く、またあったとしても代入する数値を特定できなかったりするため、シミュレーションツールに適用することはできません。あくまで定性的な説明となります。
当社のEMC設計は学術的な背景に基づいたモデルを用いているので、計算やシミュレーションを適用でき、対象となるEMC設計に関して定量的な検証・解析をすることができます。即ち、EMC設計ツールとして使うことができるのです。
是非ご検討、宜しくお願いします。
*関連ページ
22. EMC対策、グラウンド(GND)に関わるイメージに要注意!
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