ESDスキャナで観測。でもやっぱり対策はいつものGND強化?

最新のESD対策のツールとしてESDイミュニティースキャンという評価システムが米国の会社より紹介されています。既に大手メーカーが採用しているようでした。そのシステムの概要は、ESD試験(IEC64000-4-2)に近いパルスを近傍界プローブよりピンポイントで回路基板上の任意の箇所に照射して、その際に生じる回路機能の不具合を感知する、といったことを回路基板の目的の領域に対して繰り返し行い(スキャニング)ESDパルスに対する脆弱な領域をマッピング・可視化することで機器に対するESD試験における不具合対策を検討・実施するというものです。

さすが、“ESDの脆弱箇所を可視化する”という発想が素晴らしいと思いました。この結果と従来から紹介されているESDパルスの電流の拡散状況を重ねることで、どこでESD試験による不具合を起こしている(又は起こす可能性が高い)かを見出すことができる、ということになる訳です。素晴らしいです。

ただ気になるのは、ESDパルスに対する脆弱箇所を可視化できたとして、次にそれに対してどう対策すべきかは自分で考えなくてはならない点です。センスがよい技術者はその対策方法に行きつけるかもしれませんが、多くのEMC担当者にとってはキビシイものかもしれません。

最近、上記システム(ツール)を利用して製品のESD試験対策を行ったユーザーさんによるプレゼンを聴講させて頂く機会がありました。そのユーザーさんは製品の不具合とESDの脆弱箇所との関連付けに成功したように見えました。ではその結果に基づきどういった対策をとるのかちょっと期待を寄せていたら、対策現場でよく行われる基板のGNDと機器のフレームとを銅箔で貼る(所謂GND強化?)、不具合に関係するICの端子にパスコンの追加、といったところでした。その対策がベストであったとして、使ったシステムの結果との関係性(どうやって対策方法に至ったのか)についてもう少し聞きいてみたいと思いました。あまり詳細な説明はできないといった制約があったのかもしれません。しかし、実施された対策方法が現場の担当者なら誰でもトライする方法なので、もしこの程度のものなら現状のESD対策の現場を改善とか・新たな展開を期待することは難しく、新たなシステム(ツール)を導入するメリットは小さいように思われました。

やはり、先ずESDに関する技術的・学術的理解を深めるべきです。“機器に何が起きているのか“の考え無しで、勘と経験とか導入するツールに頼ってESDの対策をするのは時間の無駄遣いに陥り易いものです。

是非当社のESDに関するセミナーをご参考にされることをお勧めします。

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シミュレーション設計・・・見えざるリスク・Sim結果が誤り?

昨今のDXの流れの中で、機器・装置の企画・設計プロセスでのシミュレーションツールを使った電子データ(デジタル)段階での検証に大きな期待が持たれていると思います。何故なら、その目的として従来の設計プロセスにおける各担当技術者の業務負担の軽減と設計プロセスにおける費用対効果(コスパ)の改善が期待できるからです。

シミュレーションと聞くと、何となく技術的(テクニカル)でかつ学術的(アカデミック)な雰囲気から、そこから導き出された結果について大抵の技術者は受け入れるでしょう。寧ろ結果を否定する客観的な根拠を挙げることの方が難しいと思います。“多分上手く行っているんだろう”という印象を持たれるでしょう。

でも、“シミュレーション結果が誤ったものだった!”ということもあるのです。

シミュレーションはツールとなるシミュレータ自体に問題はないにしても、そこに設定したシミュレーションモデルや条件設定には多くの課題があります。主なものを挙げますと、

①Sim対象に関する仮説(前提)に関する可否

②諸条件の可否

③設定したモデルの構造の不備

④結果に対する評価

・・・・

上記の件について私が長く経験した電磁界Simの場合に当てはめてみますと

①については極めて重要であり通常Simを行う場合、得たい結果を予測してモデルを設計していました。そもそも、こういったSimを行う目的はSim対象において起き得る問題に仮説を立て、その仮説の検証と、その問題レベルを可視化するために行うものなのです。そのためただ単にモデルをシミュレータに突っ込んでSimしたら思いがけない結果が得られた、等ということはあり得ず、“事前に課題と仮説ありき”で始めるものなのです。従って、この最初の段階で道を誤ると何の意味もないSimとなります。

②についてはSim計算を早く収束させるためにSim結果に影響が少ないだろうと思われるモデルの構造に対して簡略・省略を行ったり、Sim計算する空間を制限したりします。そういった調整がどの程度計算結果に影響するかをいちいち検証することはハード(計算機)側のリソースに制限があるのでできません。あくまで勘と経験(Simと実測の結果の比較等)で行います。

また、不要輻射(EMI)のSim等はノイズ源となるSimの信号源をどこに置くかも課題です。またその信号源のインピーダンスをどう考えるかも定まったものはありません。私の場合、今までの経験で決めていたというのが正直なところです。

③に関しては、痛い経験があります。ある構造物に関するSim結果でEMIに関して顕著な傾向が出てきたことから関係者に注意すべき点を説明したのですが、実機の測定では全くそのような傾向は現れず、よく調べてみたら作ったSimモデルに絶縁であるべき箇所が短絡していたというエラーが見つかりました。結果として、関係者に必要のない迷惑をかけ、Sim設計の信用度を落としてしまいました。やはり、シミュレーションにはオペレータによるSimモデルのエラーの見落としが起きてしまうリスクがあるのです。

④については③にも関連しますが、取り敢えずSimの計算が終わって得られた結果を見て明らかに正しい/おかしいと判断(電磁気学的、高周波回路学的に)できる場合はよいのですが、それなりの結果が出てきた時に、それをどう解釈するかが問題になる場合があります。特に3D表示で示される結果は一見カッコよく見える(ホントーは分かりにくい)のですが、“何故そうなるのか?”が説明しづらいのです。オペレータとしては説明できそうな現象に結び付けて解釈し、関係者に説明してしまうケースもあるでしょう。本来であればいくつかの条件を変化させたSimを繰り返してから結果の傾向を読み取り、それを関係者に報告すべきでしょう。しかし、一回のSimの時間に1日程度かかるような場合はSimの繰り返しは難しく、こういったSimを時間が限られた製品設計の現場に適用していくのは厳しいでしょう。

Sim結果の報告の現場で、関係者から“課題に対するSimの結果はわかりました。ではその対策方法を教えてください。”等といわれるシーンが結構ありますが、“課題に対するSimの結果”だけでは対策方法がわからないのが現実です。

電磁界Simを例にシミュレーションについて述べましたが、高度で複雑なシミュレーションになる程に第三者には見えない部分が増え、シミュレーションの精度も分かりづらくなってくるものです。最悪の場合、出てきたSim結果で研究開発の方向を誤る場合も出てきます。そのため高度で複雑なシミュレーションは複数のオペレータによって、チェックをされながら進められるべきです。しかし、電磁界Simレベルのオペレータには一人で複数の課題を担当するのが通例でしょう。やはり上述したリスクを抱えたSimとなってしまうのです。

やはり、EMC設計に適したシミュレーション活用は当社が提案しているMBD(Model Based Development)となるPDSDです。Simモデルが簡易で計算時間もごく短時間、結果が1D-グラフで傾向が分かり易い上、回路設計者であれば誰でもモデルや結果を検証し易い特徴があります。是非ご検討下さい。

*関連文献

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10. EMC設計、レガシー3D-SimからMBD (1D-CAE)へDX!

MBD、EMC設計を革新

ループ状配線 ➡ノイズのアンテナは考えすぎ

回路基板のA/W設計において、注意すべき配線設計として“ループ状配線の回避“が挙げられています。このループという言葉の響きだけで中学生の理科で学んだコイル(ループ)から出てくる磁力線をイメージして、ループアンテナができて電波(ノイズ)が空間に放出されることを考える方もいるでしょう。

しかし、上記のコイルやループは本当に電波を受信・送信するアンテナになるでしょうか?

実際に市販されているAM帯のラジオ(526.5kHz~1620kHz)のアンテナはループ(コイル)形状を使ったアンテナです。ただこのループアンテナ、AM帯の波長に比べてかなりコンパクトだと思ったことはないでしょうか?FM帯(47MHz~108MHz)用のループ形状のアンテナもあったりしますが、それに比べても小さい形状になっています。

実は、AM帯のループ形状のアンテナは基本的に受信しかできないアンテナなのです。少しアンテナの知識をお持ちの方なら、アンテナならば受信・送信の双方ができるもの(同一アンテナの相反性)と理解されていると思います。“8. ノイズも電磁波。検出するのはアンテナ?プローブ?”でも説明しましたが、AM帯のループ形状のアンテナは空間の高周波磁界を検出するプローブであって機能としてはコイル(空芯のインダクタ)なのです。AMラジオではこのコイルで受けた高周波磁界で高周波電流を生じさせて、それにつながる同調回路によって目的となる周波数(チャンネル)を選択します。

このAM帯のループ形状のアンテナに無理やり送信周波数を入れようとしても、ループ形状のアンテナからは磁界成分しか形成できないため、“11. ノイズという電磁波。では電磁波とは?(1)”の中でも述べていますが、電波伝搬として必要なTEMモード(電波伝搬方向に対して横側に電界と磁界を形成)を構成することができず、ループ形状のアンテナから電波を放射することはできません。

因みに、テレビ放送のUHF帯(470MHz~770MHz)で利用されているループ八木アンテナのループは磁界の検出ではなく電界を検出するために機能しており、コイルを巻いたループアンテナとは異なる動作原理のアンテナとなっています。(このループはその開口面を飛来電波の磁界成分側に向けて使用することはありません。)

以上のことから、回路基板の配線設計で配線形状が何となくループ形状になっているからと言ってその形状がループアンテナになることはありません。特にベタのGND層が形成された多層基板で配線した形状がループ形状であってもその配線パターンから電波(ノイズ)が放出されることはありません。但し、配線長が波長短縮の影響を加味してノイズ周波数の半端長レベルになるとループ形状等に関係なくノイズ放射のリスクは高まります。このノイズ放射のリスク回避の方法に関して当社の”SD適用(実践編)“の中で解説しております。

A/W設計の注意事項として“ループ配線を避ける”というものは所謂イメージです。そんなことよりもEMC設計実践のためにもっと注意を払わなければならないA/W設計事項があります。当社の“WD”ではEMC設計上必要とするA/W設計事項とそれを基板設計に反映させるための方法をご紹介しています。

是非、当社のPDを含めて、SD、WDをご検討ください。

“GNDが揺れている”、って何ッ?

機器のEMI(不要輻射)の対策の現場で、観測されるノイズのレベルが規制値以下になかなか下がらず、どう対策すべきか苦闘しているときに現場の担当者がよく口にするフレーズで、“機器のGND(機器の金属フレームを指す場合も)が揺れているのでは?“があります。

何気なく口にするこのフレーズ。では実際にGND電極・構造物にどんなことが起きているのか考えたことがあるでしょうか?

思いつきそうなことを下記に列挙してみました。

①GND電極の至る所で異なる電圧が発生している。(水面が波立ったイメージ?)

②GND電位の構造物の特定箇所(端部とか中央部)の電圧が±の電位で変動(振動)している。

③ノイズがGND電位の構造物にノッテ(?)いる。(憑依するイメージ?)

④GND電位の構造物がアンテナとなってノイズを放射している。

・・・・

などGND電極におけるノイズに関係した電圧について思いを巡らし、その電圧が電波(放射ノイズ)になると考えられているようです。そもそもその考え方の根底にあるのは、GND(いわゆるよいGND)の電位は常に0Vであって、それが構造物であっても至る所0Vであるという考え方があるためではないかと思います。

市販のEMCのハウツー本等では信号・電源のGND、フレームGND、システムGND等を定義して、より概念が高位(?)のシステムGNDの電位は0Vであるので、信号・電源のGND、フレームGNDはシステムGNDに対して電位差を持たないようにGND電極の電位を設計すれば放射ノイズを低減できると解説しています。(GND電位絶対説?)

理想的にはそうなのかもしれませんが、実際の機器の設計においては、信号・電源のGNDは回路基板内に形成することになります。フレーム(金属)についてはフレームに回路基板を装着・固定するために回路基板のGND電極と電気的に接続(ESD耐性や電気安全規格の関係)させるため、GND電位にします。しかしながら、システムGNDは機器の内部には存在しません。仮にEMIを測定する電波暗室の床面がそれに当たるとしても、その電波暗室の中でしか成り立たないものになります。

ではGND電極は0Vとなる電位をもつものなのでしょうか?

上記の①、②に関しては当方の技術解説<9. ノイズ電流の流れ方。その前に前提のモデルを考えて。>でも説明していますが、DC・ACに関わらず電気・電力は正負ニ極により伝送されます。そのニ極の間において正負一対の電荷が伝導していきます。電荷があるということは電位がある(0Vではない)ことを意味します。信号・電源ライン(活線)の電位は同一箇所・同一時間のGND電極の電位に対するもの(電位差)で、信号源(電源)の電圧レベルが維持されるように、GND電極の電位はその活線側に合わせて変動しています。よって0Vをキープするものではないのです。GND電位を0Vとするのはあくまで“仮定で”とか“相対的に”といった前提から設定したものなのです。

③については、上記の説明の如く、GND電極だけの単一極のみで電気・電力が流れ込むことはなく、設計者が積極的にGND電極へノイズが結合するような構造を作らない限りフレームのGND電極にノイズが“ノル”ことはないと考えられます。ただまあ、相当に運悪く電気的結合構造が偶然できてしまうという状況は全くないとは言えないかもしれませんが。

④に関しては、EMIの主要因として考えるのは難しく、フレームのGNDや回路基板のGND、更には回路基板間を電気的に接続するハーネスがある場合は、それらがEMIに対して複雑な影響を与えます。こういったEMI対策検討として、放射されるノイズの偏波特性(水平&垂直)をよく見てみることは意味があります。偏波はノイズの放射器となってしまった構造物・形態に関するヒントを与えてくれる場合があるからです。フレームがアンテナになるような場合は回路基板やハーネスと関係(電気的・構造的:“EMC設計 MBDでDX! 技術&学術”で解説)があり、そちらを先ずよく観てみるべきでしょう。仮にフレームがアンテナになっていたとして、製品の外観を形作るフレームを試作が進んでいる段階でその構造・構成を変えることは製品設計~出荷プロセスの中では極めてリスキーです。実施できないEMI対策でしょう。

いづれにしても、“GNDが揺れている”と思ったところでEMIの課題が解決する訳ではありません。課題解決のための適切な知識を持って対策することが重要です。

当方が解説しております、PD、SD、WDにおいてはフレームGND、システムGND等の考え方は必要ありません。あえて否定するものではありませんが、“特に考える必要はない”といったところでしょう。実機によるEMI測定・対策する前の段階でEMIリスクを低減できます。是非ご検討ください。

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22. EMC対策、グラウンド(GND)に関わるイメージに要注意!

16. GND-Via その配置間隔にルールは無い

EMC設計はGND強化! って~なんの強化なの?

7. GNDが関わる機器EMI対策につて考えてみる。

19. グランドループ➡ノイズ放射・・・過剰な妄想かも!

21. 機器・装置間の接続ケーブル・・・シールド線(GND)は両端接続が基本!

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EMC設計と言いますと、PI/SI/EMCの検討と言いますが...

本ブログに訪れて頂いた方々は既に多くのEMCのエキスパートの方々のセミナーでEMC設計を行うためにPI/SI/EMCの検討することを見たり、聞いたりしていることでしょう。しかし、この検討のEMC設計に対する可能性と効果を認めつつも、実際の機器・装置の設計・試作を行う段階でこの検討を実施されている技術者の方々は少ないのではないでしょうか?

PI/SI/EMCの検討に最適化されたツール(PCソフト)はいくつも出回っており、そのツールに設計する機器・装置の回路条件・実装条件を入れ込んで行けばEMC設計ができるはずと考え、そのツール(結構高価なものですが)を設計部門に導入して専任のオペレータも張り付けてEMC設計の検討を始めるのですが、結局設計部門では使われなくなっていく、と言った状態ではないでしょうか。

例えばPI。設計対象のIC(例えばSOC)の電源端子から見た電源ラインのインピーダンス(インプットインピーダンス:既に高周波回路理論が分からないと意味が分からない概念です)をSOCの電源端子の(負荷)インピーダンス(ターゲットインピーダンス)よりも低く設定させる検討となります。

インプットインピーダンス/ターゲットインピーダンスと、分かりにくい概念を使用しますが、基本的にはΩ単位で表現されるので、評価としては2つのインピーダンス値を比較するだけです。しかし、ターゲットインピーダンスなるものは、ICベンダー側がICユーザー側に提供されるべきものなのですが、大概の場合提供されません。またICの設計側としても算出に当たり理論的な扱いは理解できても実際のICから導出するのは難しい(面倒?)なものなのです。(但し、安全係数を掛けた適当に低い値は設定できます。)

また、ICベンダーとしては提供するICを安定動作できるために推奨回路(リファレンス)を用意しており、ユーザー側はそれを深く検討することなくそのリファレンス通りの回路を基板に実装します。結局、PI検討の出番がないのです。
これに対して、当方のPD適用はインピーダンスという概念は必要ありません。回路図設計段階で基板間を接続するケーブル経由の電源ラインを含めて検討対象のIC電源端部に設定すべきパスコンの条件を最適化できます。またこの最適化は電源ライン起因で放射されるノイズ(不要輻射)のエネルギーレベルに合わせて行うことができます。また、ICベンダー提供のリファレンス回路におけるパスコンの個数の削減検討にも利用できます。

次にSIですが、現在市販されているSIツールで行うことはSOCや各種ドライバーIC、メモリーIC等の信号受信端における信号波形の確認、更には信号波形のアイパターンの確認と言った信号波形品質をSimで確認することになります。昨今のGbpsレベルの高速インターフェースに関しては信号ラインを含めて事前にSIを確認しておくことは必須だと思いますが、10MHzレベルのCMOSロジックの信号に関して事前にSIを検討するケースは少ないのではないかと思います。実はSIと不要輻射(EMI)の関係について詳細に解説している資料・文献は無いのです。

これに対して、当方のSD適用では回路図設計段階で基板間を接続するケーブル経由の信号ラインを含めて検討する方法及びSim結果の波形からEMIに関わるデータが得られると共にその対策方法も提供しその状況をSimで確認できます。
最後にEMCですが、基本的には製造する回路基板(プリント基板)のA/W設計に対するルールチェックであり、ルールチェッカー(PCツール)を適用することになります。このルールチェッカーに関する問題点は当方のホームページ内の” 5. 回路基板におけるEMC設計の実践と検図。当社のWDを提案。”で紹介しています。チェッカーツールとしては想定されるNG項目を並び立てることがメインの機能なのでそれにまじめにお付き合いするか、無視するかはユーザー側に委ねられるので設計現場の都合からチェッカーを使う意義が問われ、結局使われなくなります。

これに対して、当方のWDではEMC設計として実施すべきA/W設計項目を規定して、その実施状況をチェックするやり方です。規定したA/W設計項目はCAD作業の際の作業指示書として作成してCAD作業者が実施したことをチェックし、このチェックの状況を基板CADの受け入れ側がチェックします。これにより基板のA/W設計段階で想定されるEMC設計上の懸念事項に対応することができます。(もしそれ以外にもEMC課題があったとしても、想定外の事柄を事前に盛り込むことは不可能です。)

もし、これらからEMC設計を検討されるようでしたら、是非当社のPDSDWDも検討候補の一つにして頂けるとありがたいです。

※関連ページ

     2. ICの電源ライン、パスコン最適化に当社のPD適用。

     3. 信号ラインのダンピング抵抗、当社のSD適用のSimモデルで抵抗値を設定。

     5. 回路基板におけるEMC設計の実践と検図。当社のWDを提案。

     公開技術資料

     MBD、EMC設計を革新

     MBDの活用 ・・・➡現象のメカニズム理解・スキル向上の活動に

EMC設計はGND強化! って~なんの強化なの?

回路基板の構成で、例えば4層基板の第2層目をベタGNDパターンにするのは定石のなようなものであって、これをもって、強化(限られたパターン領域において支配的?某国の領土のように?)というのであれば正しいでしょう。ベタGND即ちGND側電極の共用化は、回路基板内の各活線(信号/電源)を目的のポイント間で配線する際に、回路基板のいたる所で対向極(GND)電位を確保できるという点で、配線設計の上での消費面積を小さくできる点でも優れています。

よって、多層基板内のベタGNDは基板設計上不可欠な設計方法と言えます。また、配線パターンとなる活線側から出る(or入る)電気力線が常に対向するGNDベタパターンに向かう形態(モード)になるので、EMCの観点からも好ましい構成と言えます。電磁界シミュレーションで確認できますが、活線パターンとGNDパターンの対向している領域(絶縁層)に電界が集中し、対向した各電極の表面側にそれぞれの電流(流れ方は反平行)が集中します。GND側がベタパターンであってもその電流分布が広がることはありません。

しかしながら、EMCに関するハウツー系の解説では

①ノイズの逃す先のGND

②GNDのインピーダンス(インダクタンス)を低く抑える/GND間での電位差がノイズに

と言ったGND-ノイズに関する記述が沢山あります。しかしながらこれらはイメージであって、誰もそれを測定したり計算したりして定量的に確認したことが無いものなのです。

そもそも、回路基板上の電気は2極(⊕と⊖/活線とGND)の電極によって2極間の電位差として伝達されます。(詳しくはこちらページで!)また、GND電極側をリターンパスとよく記述されていますが、高周波(交流)信号が伝達される際は見かけ上活線側がGND側に対する高周波電流のリターンになる瞬間(位相)もあるわけです。このリターン(直流・交流を問わず)の考え方は慣用的なものであってEMC関係の初心者向けに分かり易く説明するための所謂“EMC解説モデル”によるものなのです。

この“EMC解説モデル”によりGNDに関して上記の①②の解説が行われています。実際EMI対策の現場でGNDに関わる施策により不要輻射の傾向が変化する状況を経験するとGNDに対する信望(救いの神)の様な思いを持つようになるのかもしれません。

しかし、上記の①に関しては実際のGNDパターンは電源ラインや信号ラインにおける対向極でしかないので、ノイズを吸収したり、貯めたり、電源側に戻したりする機能はありません。

また、②に関しても高周波回路を勉強された方ならわかると思いますが、2極の伝送路では高周波の波動性から異なる箇所での活線とGND間の電圧/電流(同一時間で)は異なりますが電力としては同一なので、一定値の負荷の端子においては必要とする電圧/電流を確保することができます。従って、回路基板上の大概の2極の伝送路では送受信間で必要とする電圧のやり取りが可能です。(但し、極端に伝送路が長い場合や、周波数が1GHzを超える信号等の場合は他に考慮すべき事柄が出てきます。)

“EMC解説モデル”は“あくまでそのように説明できる”、と言ったものなので計算式は無く、またあったとしても代入する数値を特定できなかったりするため、シミュレーションツールに適用することはできません。あくまで定性的な説明となります。

当社のEMC設計は学術的な背景に基づいたモデルを用いているので、計算やシミュレーションを適用でき、対象となるEMC設計に関して定量的な検証・解析をすることができます。即ち、EMC設計ツールとして使うことができるのです。

是非ご検討、宜しくお願いします。

*関連ページ

    22. EMC対策、グラウンド(GND)に関わるイメージに要注意!

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    16. GND-Via その配置間隔にルールは無い

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     電源系30MHz帯ノイズ Sim & 対策

     EMC設計 MBDでDX! 技術&学術

     公開技術資料

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機器・装置/ロボットにトラブル発生!不具合解析に行き詰まったら...

かつて某放送局で放送された高専や大学関係のロボットの競技会(ロボコン)を見ていた時に、大会当日のロボットの調整中に突然制御不能の不具合に陥り、学生達のその場の対処も空しく競技に出場できないシーンがありました。また、別のロボコンの大会でも競技中にそれまで上手く動作していたロボットが突然不具合に陥り競技続行ができなくなるといったシーンもありました。

こういった原因の良く分からない不具合発生は一般的な電子機器(特に可動部を有する機器)においても起こり得ることで、機器設計の現場では把握できず製品を出荷した後お客様の使用現場で発生してクレームになったりします。

こういった不具合は機器設計の現場では再現が難しく、また通常(と思われる)場では全く問題もなく動作し、原因解析をしてみてもよく分からなかったりして、”まあ、取りあえずいいか”という感じで放置されがちです。

一般的な機器設計の現場においては、こういった原因不明な不具合への解析方法に決定打はなく、もし検討するとすれば、誰でも先ず多分原因の仮説をいくつか立てて系統化して(QC手法の特性要因図のような)それらを実測等により各仮説を検証して原因究明する方法をとるでしょう。しかし、この方法の問題点は真因になるもの又はそれに関連する発想・考察が列挙した仮説の中に無ければ時間と手間の無駄となります。

こういった不具合対策関係のセミナーに参加したこともありますが、①機器自身からのノイズ、②他の機器からのノイズ、③周囲環境(作業場)と電源・アース(伝導ノイズの関係)、と言ったところから調査を始めるようですが、ただまあ、よくありがちな先ずノイズを疑うという常套手段のようなものでした。またこれに関連するのですが、私が過去に目にした機器の不具合対策で上記の②に関連したノイズを疑って調べていた同僚がいましたが、それは全く無意味なものでした。仮説という名の単なる思い込みから始めたようですが、そもそもEMC規格を満たして出荷されてきている他の機器が原因になることはまずないからです。

よくわからないノイズの影響を求めて原因の調査をはじめるのも一つの方法かと思いますが、場合によってはESDの影響を考慮することも必要なのでは、と考えています。私の過去の不具合解析でも機器の動作中でのESD(火花放電)の発生を間接的に計測機で観測し、その発生を対策することで不具合を起き無くした(解決した)例が幾つかあります。

特に火花放電はモーターによる可動部を有する機器で起きやすく、その発生メカニズムを理解していると早く不具合原因に行きつけます。私の過去の例では1年以上解決されなかった機器の不具合を1日で解決できたこともあります。

ESDの現象は回路学的なアプローチとは異なり、むしろ物理学的(静電気学・放電工学)な考え方を必要とします。しかし、ESDが原因と考えてESDガンで不具合現象の再現を試みている技術者がいたりしますが、その方法はたいてい不具合解析に失敗します。何故なら、不具合発生時の火花放電とESDガンのそれとは発生メカニズムが全く異なるからです。更に、ESDに関する知識についても一般生活で経験しているレベルにとどまっている人は不具合発生時の大事なサインを見逃します。

原因がよくわからない機器の不具合対策でESDについて調べてみたい方は、当社のセミナー“6.1.静電気に関する理論的解説・メカ設計”はお薦めです。またこのセミナーのテキスト(有料)を当ホームページに掲載する予定ですので、ご利用ください。

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ESDシミュレーションに新たなソルバー登場!

空気の乾燥はESD(静電気)対策の大敵?

冬場の静電気は誰もが経験するいやな現象でしょう。特にお風呂に入る前の脱衣時に衣類と衣類のこすれで聞こえる”パチパチ”という音(暗いと光も見えます)や、脱いだ衣類がヒトの皮膚に”ゾアー”とした感じを与えるのも嫌な感じです。

”冬は乾燥するから”との思いから”静電気発生”⇐”乾燥(低湿度)が原因”と考える方も多いでしょう。確かに湿度、即ち大気中の水蒸気量が静電気の発生に影響します。

ではどう影響するでしょうか?

水蒸気である水分子は水素原子と酸素原子により構成され、水分子全体としては電気的に中性ですが、図に示すように電気的な偏りを持っており極性分子となります。この水分子は大気中に十分にランダムに存在するのではなく、水分子同士の極性(水素結合の引力)によってある程度集団的に存在し、その集団は全体として正、又は負の極性をもちます。

それに対し大気中にある物体はその表面に電位を持つので、その電位に反応して水分子の集団が物体の表面に近づき、物体の表面の電位を下げる作用を示します。これは静電気メーターで物体の表面電位を測定する際、測定する物体の表面に息を吹きかけて測定を行うと測定値が0V側に近づくことで確認できます。

よって、湿度が高い時は上記の作用によりあらゆる物体の表面電位は0V側に変化するので、物体間における各表面の電位の差(電位勾配)も小さくなるので、静電気(火花放電)は発生しにくくなります。逆に、乾燥する(湿度が低い)と、水分子の量が減るので物体の表面電位を下げる作用が小さくなり、物体間の電位勾配が小さくなりづらく、火花放電は発生し易くなります。

それ故、”冬場→乾燥→静電気”は自然の静電気(ESD)発生の正しい関連性です。

しかしその一方で、前述したように水分子は極性分子なので電位勾配を生じさせている物体の表面付近に存在する場合、その物体表面に向かって加速し衝突(スパッタ)します。このスパッタが生じると特に物体が導体である場合は物体内部の電子が大気に飛び出し、物体表面付近にある気体分子をイオン化させ、プラズマを生じ、これが火花放電になります。

ESD試験であるIEC61000-4-2の気中放電試験ではESDガンと被試験機器の間の火花放電は湿度が高い時程発生し易くなり、被試験機器の不具合を発生させます。この現象については多くのEMC関係の方々が経験しているでしょう。これは、IEC61000-4-2の試験が自然の静電気ではなく、ESDガンの電源よりESDガンのガン先(放電チップ)と被試験機器の筐体(GND)に回路形態で安定的に電力(電圧・電流)を供給しているためで、放電チップと被試験機器のGNDの電位勾配は周囲の湿度に関係なく安定的に印加され、それにより水分子は放電チップ或いは被試験機器のGNDに向かって加速・衝突を起こし、火花放電を発生させます。そのため、水分子の数が増せば(湿度が高ければ)火花放電を発生させ易くなります。

私見ですが、IEC61000-4-2の気中放電の試験は試験条件として湿度の範囲は30~60%とされているので、できるだけ30%側ですべきだと考えています。その根拠としては、

①試験条件を満たして試験を行っていること、

②気中放電の試験は機器の実際の使用状態で生じるESDとはかなり異なっていること、

③試験ではESDガンの設定電圧を高め(1.2~1.5倍)にして試験を行っていること、

などからです。

機器の気中放電試験の未検討は許されませんが、ESDガンによる気中放電は被試験機器にとっては厳しい試験であり、機器へのダメージが大きく、試験により破損に至る場合もあります。ESD課題の対策作業の際、過多なESDガンパルスの印加により被試験機器の破損に気づかず対策作業が泥沼化するケースもあります。

是非ESDの試験、特に気中放電の試験は湿度にも注意を払って行ってください。

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