EMC設計は、EMC対策という言葉より後の時代になって出てきた言葉です。電子機器の不要輻射や伝導ノイズについては、1980年代頃から本格的に規制されるようになりました。それ以前から、各種無線機やラジオ、テレビの周波数帯への妨害となる違法電波の取締は行われていました。これに対し電波の送受信をしない電子機器からの意図しない電磁波ノイズの放出に関して、当時はアナログの電子機器が主流の時代だったので電子機器はノイズの影響を受け易く、”ノイズの垂れ流しは許されない”という思いで多くのエレキ技術者がノイズ対策に取り組んでいたと思います。
しかしながら、この意図しない電磁波ノイズの放出(EMI)を低減させるのは当時のエレキ技術者にとって必ずしも容易なものではなく、EMIを低減することを主な目的とした電子機器の調整をEMC対策というようになったと思います。当時は設計した電子機器を先ず試作して、実際に評価(動作確認の後にEMIの測定)を行って、EMIのレベルが規制値を超えるか否かを”出たとこ勝負”的に評価して、運悪く規制値を上回ってしまうとEMC対策部品を”とっかえひっかえ”で電子機器に後付けして何とか規制値以下にすることを必至になって行っていました。この活動は明らかに”対策”であって、”設計”するという雰囲気はありませんでした。つまり、EMC対策とは、特にEMIにおいてノイズレベルを規制値以下にするために実際の機器に直接調整・修正を行う活動でした。
このような機器への後付け調整を行うEMC対策のリスクを改善したいと考えるのが自然の流れで、機器の試作評価前にEMC対策を行うことが検討され、そのためにノイズ低減のための方策の研究が進み、EMI対策の効果を事前に見積もる試みもなされてきました。こういった活動は以前のEMC対策とは異なるので、EMC設計と呼ぶようになったと思います。あるセミナーで某大学の教授も”これからはEMC対策ではなくEMC設計をする時代だ”と、約10年前に言っておられました。即ち、EMC設計とは製作前の機器のEMC評価を設計段階(デジタルデータの段階)で見積もり且つ、ノイズ規格値以下に調整して機器の製作後のEMCリスクを低減する活動であり、将にDX(Digital Transformation)時代におけるEMCの究極形態なのです。
EMC設計はまだまだ発展半ばです。現在、いくつかのツールベンダーは回路基板CADに対してEMCルールチェッカーで検証、或いは電磁界解析ツールで解析、といったEMC設計を提案しています。これに対しセットメーカーの商品化プロセス(機器の企画→設計→試作→量産)にとって、そういったツールの適用・運用がマッチしないとう状況もあります。セットメーカーとしては商品化の時間軸が最優先されるので”後戻りはない・させない”、という勢いで商品化プロセスは進みます。回路基板CADの作成プロセスも同様で、EMCチェッカーの結果や解析結果をCADデータに十分反映できず(反映させるは時間的損失を伴うため)、結局チェックツールや電磁界解析ツールは使われなくなったりします。
こういった残念なEMC設計にならないように当社は”PD適用”、”SD適用”、”WD提案”をユーザー様に向けてご用意しております。是非ご検討ください。
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