28. EMCフェライトコア、機器・装置のフレームグランド(GND)に嵌める! 不要輻射(EMI)対策の現場で、何となく機器・装置等のフレームグランドがアンテナとなってノイズを放出しているのではないか、等と考えてしまうことはないでしょうか?そんな時、フレームグランドにフェライトコアを嵌められないだろうか、なんて思ってしまうことはないでしょうか?対策活動が苦しくなってくるといろいろ妄想してしまうものです。 当ホームページの“24. フレームグラウンドにノイズ電流ッ!、、、普通に流れます。”でも記しておりますが、フレームグラウンドにノイズ電流が流れ、それがノイズの不要輻射(EMI)の要因になることは明らかであり、その状況は電磁界Simでも確認することができます。 EMI対策を検討している機器・装置の内部のエレキ構成にもよりますが、もしメイン基板とサブ基板があり、それらをハーネス(ケーブル)で接続する構成がある場合、大概そのハーネスにフェライトコアを装着してEMI対策の効果を得ていることでしょう。そこで更なる効果を期待して上記したような“フレームグランドへのフェライトコアの装着を妄想してしまうのかもしれません。 このフェライトコアに関しては当ホームページ“EMCノイズ対策部品のフェライトコア。EMI対策の定石?”の中でも触れていますが、そのEMI低減のメカニズムについて、電磁界シミュレータ(CST Studio Suite LE)を使って検証してみました。 図-1 図-1はSim検証するためのモデルであり、信号ラインとGNDラインの対でハーネスを想定したモデルとし、そのハーネスモデルの下方にベタのGNDパターンを配置してこれでフレームを想定したモデルとして、同一フレーム内でメイン基板からサブ基板に信号を伝送している構成をSimモデルとしてみました。 ハーネスのGNDラインは下方のベタのGNDパターンと接続しており、信号ラインとGNDライン対の一方の端に信号源、他方は開放の状態にして、信号ラインとGNDラインの対の信号源側の近傍にフェライトコアを装着(コアの中央の隙間にハーネスを通す)した状態にしています。 図-2 図-3 図-2は信号入力後0.9ns後のSim結果であり、図-3は上記のフェライトコアをハーネスに装着しなかった時の信号入力後0.9ns後のSim結果です。図-2、図-3を比較して観ると、フェライトコアの有り/無しにより、ライン対(ハーネス)の下方のベタGND、即ちフレームでの電流値及びその分布はフェライトコアが有る時の方が小さくなっていることが分かります。 このメカニズムは当社のホームページ“24. フレームグラウンドにノイズ電流ッ!、、、普通に流れます。”でも説明していますが、図-4に示すように、信号ライン対又は電源ライン対の活線側及び、フレームGND(図-2、3ではベタGND)を流れる電流Igに対してフェライトコアがインダクタとしてチョーク(電流を抑制)しているためなのです。 図-4 従って、電流Igをチョークする作用として“フェライトコアをハーネスに装着した”というのは、“フェライトコアをフレームグランに履かせた”と同等ということになります。何れによっても電流Igはチョークされ、機器・装置のフレームがアンテナ(放射体)となって放出されるノイズは低減されます。 しかしながら、不要輻射対策の現場で、既にハーネスにフェライトコアを装着しているのに、ノイズレベルが規定値まで下がらず、フェライトコアをハーネスに数珠の様に複数装着させている状況もあったりします。ご存じのようにフェライトコアの装着は1個目で顕著なノイズ抑制効果を発揮しますが、更にコアを追加しても期待したノイズ低減効果は得られないものです。これは基本的に信号ラインや電源ラインにおけるノイズレベル(絶対値)が高いためなのです。 そのような時は、当社が提案しております、PD、SD適用でノイズ対策を施し、更にノイズ抑制効果を追加したい場合にフェライトコアの装着を加えることをお勧めします。尚、PD、SD適用は回路図設計段階から実施できるEMC設計です。 関連ページ 24. フレームグラウンドにノイズ電流ッ!、、、普通に流れます。 25. これがグラウンド(GND)を流れるリターン電流! EMCノイズ対策部品のフェライトコア。EMI対策の定石? EMC設計 MBDでDX! 技術&学術 信号ラインのEMC設計は”SD適用”で決まり! 電源ライン設計を革新。PD適用