2. ICの電源ライン、パスコン最適化に当社のPD適用。

PD適用は当社が機器・装置の回路設計者に是非提案したい、回路図検討段階でできる(やるべき)EMC設計です。

PDとはPI Design for EMIの略称ですが、PI (Power Integrity)ICに電源を供給する電源ラインにおける、ICから漏洩するノイズのデカップリングとして評価します。このノイズのデカップリングに関して、一般的にICの電源端子から見た電源ラインのインプットインピーダンスとして数値化(単位)し、できるだけ小さい値にすることが望ましいとされています。尚、インピーダンス値の設計としては複数のコンデンサ(パスコン)の組合せで行います。

しかし、どの程度までインピーダンスを低くすればよいのかは回路設計者が判断することになります。一つの目安になるのはICの電源端におけるターゲットインピーダンスです。これが分かっていればそれに合わせてインプットインピーダンスを設計すればよい。しかし、ターゲットインピーダンスはICベンダーが提供できる値であって、ユーザー側が何か評価して得られるものではありません。その上、ICベンダーからの提供についてもあまり期待ができないのが実状です。

そもそも、PIの評価となるインピーダンス値とEMI(不要輻射)とどのような関係があるのでしょうか? また、インプットインピーダンスが低い周波数帯域で、例えばインピーダンス値を1下げると、EMIとしてはどのような変化をするのでしょうか?

残念ながら、今までのPIの評価のやり方では、それらを明確にすることはできません。現状の電源ラインに関しては、回路設計者はIC(特にSOC等)ベンダーが提示する推奨回路に従って、PI評価によるデカップリング量を検討することなく、コピーペーストで機器・装置のIC周辺の回路図を作成しているでしょう。また、各個別のドライバーICの電源端子についても習慣的に0.1uF等のパスコンを付加しているでしょう。

しかしながら、ICベンダーの推奨回路はICを動作させる上で問題が生じないレベルにインピーダンスを十分に下げた構成とした一方で、過剰に低インピーダンス化されている可能性もあります。また、各個別のドラバーICについては代々の回路設計者の伝承・経験に基づくまちまちの容量値のパスコンを習慣的に付加しているでしょう。その結果として、不必要に電源ラインを低インピーダンス化している可能性もあります。

こういった状況のPI評価に対して、当社のPD適用はパスコン設定によるEMIの影響をdB値で評価することができます。従って、目標評価値に基づいてパスコンの設定の最適化が可能になります。パスコン使用数量の削減を検討されている回路設計者、EMC担当者には最適です。

PD適用ではインプットインピーダンス、ターゲットインピーダンス等を考慮する必要は全くありません。評価ツールとしてもライセンスフリーのLTSPICEでシミュレーションすることができ、評価結果は瞬時に得られます。

実は、同一回路基板内にレギュレータとしての電源回路とその電源回路から供給される電源ラインに接続するICがある場合は、パスコンの数は気になりながらもEMI対策としてのPIについてはそれ程深く検討する必要性はないかもしれません。EMI対策としては比較的オキマリの方法で十分でしょう。

しかし、メイン基板側に電源回路があって、メイン基板からの電源ラインがハーネス(FFC等)を介してサブ基板側に送られている構成では、EMIとしてのリスクはかなり高まります。このEMI(ノイズ放射)については和田教授(京都大学)のいくつかの論文で紹介されています。(和田モデル 当社の“EMC設計 背景説明のセミナーでそのメカニズムを説明します。)このような構成についてのPI評価は、ソフトウェアベンダー供給の有名PIツールではモデルの設定が複雑となるためか、その評価事例を目にしたことはありません。しかしながら実際の機器・装置等での電源ラインによるEMI課題はこのような構成の時に顕著に表れます。むしろ、この構成になった時にEMI課題を検討(EMC設計)する必要があるのです。

当社が提案するPD適用ではこのような構成でも容易にSimモデルを作ることができ、検討することができます。
詳細につきましては、当社コンサルティングの“PD適用に付随するセミナーで紹介いたします。

当然のことながら計算結果のグラフの見方・読み取り方が重要であり、セミナーではそういったグラフの見方・読み取り方についても説明いたします。

PD適用はSPICEシミュレータによる回路図設計段階での評価・検討なので昨今の新卒の回路技術の方々にとっては学生時代に既に経験したツールだと思われ、回路設計の現場に比較的馴染みやすい・定着し易い方法ではないかと考えております。

また、LTSPICEは手軽で比較的操作が簡易なツールです。必要に応じてですが、未経験の方々にはその操作方法について当方から説明も行えます。そういった方々にはこれを機会にLTSPICEを設計現場のツールとして利用していって頂きたいです。

1. LTSPICEシミュレータを使ってEMC設計を行う

当社のEMC設計、特にPD適用SD適用に付随しますセミナーではLTSPICEを使って説明致します。特にPD適用につきましてはLTSPICEで電源ラインにおけるEMI対策設計として有用な方法を紹介いたします。

LTSPICEは手軽で比較的操作が簡易なツール(ライセンスフリー)です。必要に応じてですが、未経験の方々にはその操作方法について当方から説明も行えます。そういった方々にはこれを機会にLTSPICEを設計現場のツールとして利用していって頂きたいです。

但し、”SD適用に関しましては、当方としては代用としてLTSPICEを使って説明しますが、もしご依頼者様がIBISモデルを使えるシミュレータをお持ちであれば、できるだけそれに合わせた説明を致します。またお持ちのシミュレータがSignal-Adviser(富士通)でしたら、当方も経験のあるシミュレータですのでSD適用のためのSignal-Adviserの使用方法も説明することができます。

今までは回路図設計段階でEMCに関する情報を見出すことは殆どなかったと思います。実は、回路が十分にEMC設計の検討がされていないと、その後いくらEMC対策を駆使したボードデザインを実施してもEMC課題を解決できない状況に陥ります。すなわち、EMC設計されていない回路に後付けの対策をしても十分な対策効果は出せないのです。

よいEMC設計(特にEMI)は回路図設計段階で既に始まっています。これをSPICE系シミュレータで検討することを当社は強く推奨します。詳細につきましては当社のセミナーでご紹介します。当然のことながらシミュレータの使い方ばかりでは無く、シミュレーション結果のグラフの見方・読み取り方(実はこれが最も重要です。)についても説明いたします。

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